映画

2025.07.07 16:00

ブラッド・ピットを映画『F1/エフワン』で58億円の人間広告塔にした男

Brad Pitt as Sonny Hayes in Apple Original Films’ “F1 The Movie,” now in theaters and IMAX.(C) Apple TV+ Press

F1を取り巻く広告ビジネスの実態

リーナーの手腕は確かだが、現実のF1の広告ビジネスと、映画におけるプロダクトプレースメントは、本質的に異なるものだ。「実際のF1マシンのフロントウイングにロゴを掲載するためには、最低でも年間500万ドル(約7億2400万円)の広告費が必要で、チームのタイトルスポンサーになるためには、年間3000万ドル(約43億4000万円)から1億ドル(約145億円)の費用がかかる」と、業界誌The Race Media創業者でCEOのアンドリュー・ヴァン・デ・バートは語る。

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こうしたスポンサーシップはテレビ中継による露出と、それに伴う影響力をもたらす。しかしヴァン・デ・バートは、F1ファンの大多数が莫大な広告費を支払うブランドの多くについて、「ほとんど興味がない」と認めている。

「彼らが本当にお金を払っているのは、パドックに出入りして、自分たちが取引したい大企業の関係者に直接アクセスできる権利なんだ」と彼は言う。「もし、自分が話をつけたいCEOやキーパーソンの隣に座っていたことで、数百万ドルの契約を20本まとめられるとしたら、それだけで十分にペイすることになる」

一方、映画におけるプロダクトプレースメントは、一般的に「はっきりと確認できる画面上の露出」が合計3〜4秒あるセグメント単位で販売されると、リーナーは説明する。ロゴの表示、音声での言及、劇中での実際の使用といった要素がその数秒間にどれだけ含まれているかによって価格が決まり、ブランドは1セグメントあたり25万ドル(約3620万円)〜100万ドル(約1億4500万円)を支払うことになる。

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Damson Idris as Joshua Pearce and Brad Pitt as Sonny Hayes in Apple Original Films’ “F1 The Movie,” now in theaters and IMAX.(C) Apple TV+ Press
Damson Idris as Joshua Pearce and Brad Pitt as Sonny Hayes in Apple Original Films’ “F1 The Movie,” now in theaters and IMAX.(C) Apple TV+ Press

つまり、映画のスポンサーシップの方が明らかに安価ではあるが、F1をテーマにした映画では登場人物の装備やマシンに常にロゴが表示されるため、ブランド露出の時間が自然と長くなりやすい。そして、F1の文化にはもともと企業ロゴが深く根づいているため、マシンやドライバーの着衣にロゴが多数並んでいても、映画のリアリズムを損なうどころか、むしろ本物らしさを高める効果がある。

「いろんな手法がとれるけれど、プロダクトプレースメント自体が映画の一部になっているときの方が、はるかに効果的なものになる」と語るのは、ピットが演じたドライバーが所属する架空のF1チーム『APXGP』の主要スポンサーとなったオレゴン州ポートランドのソフトウェア企業、エクスペンシファイのCEOデイビッド・バレットだ。「違和感のない仕上がりだった」

史上最も困難な広告案件

リーナーのようなプロデューサーの仕事には、言わば「2つの方向に向かう営業力」が必要となる。投資効果を具体的に測る手段がない中で、映画に出資する価値があるとブランドに納得させなければならず、一方で監督には「スポンサーシップが映画にとってプラスになる」と信じさせなければならない。

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編集=上田裕資

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