トランプ大統領の一貫性のなさに慣れつつある外国の首脳
トランプ大統領が危機に対処する際に取る対立的な方法は、予期せぬ行動として現れることがある。筆者の取材に応じた米ビラノバ大学のジム・ロナン政治学教授は、トランプ大統領が最近行ったイランの核施設への攻撃を挙げ、同大統領が歴代の大統領と大きく異なるのは直接的な行動を取ることだと指摘した。「ブッシュ、オバマ、バイデン政権はいずれもイランの核兵器開発を阻止しようと努力したが、その目的を達成するための軍事行動も回避した」
トランプ大統領の外交方針と対比できる大統領を挙げるとすれば、1960年代や70年代にまでさかのぼる必要がある。ロナン教授は次のように解説した。「意図的かどうかは別として、トランプ大統領はベトナム戦争中にリチャード・ニクソン元大統領が採用した『狂人理論』を利用しているようだ。ニクソン元大統領は、北ベトナムとソビエト連邦に対する自身の影響力を強めるため、側近を通じ、他の国々に『ニクソン大統領が理性を失いかけており、ベトナムで核兵器を使用する可能性がある』と伝えようとした。そこには、北ベトナムとソ連の双方が恐怖心からニクソン元大統領と協力し、大規模な戦争に発展するのを未然に防ぐことになるだろうという期待があった」
米AP通信は、トランプ大統領の命令や脅し、SNS投稿の明らかな一貫性のなさや慌ただしいペースに対応しなければならない外国の首脳らは、同大統領の優先事項を「次から次へと振り回すことができる」ことに気づいていると指摘。同大統領は、カナダ、メキシコ、中国に対して関税で脅しながらも会談中に撤回するなど、交渉における自身を「柔軟」だと表現していると伝えた。
ベルギーのバルト・デウェーフェル首相は6月26日、記者団に対し、トランプ大統領がスペインに報復関税を課すと脅したことは「誰にとっても謎だ」と述べた。だが、同首相は「当初予想していたほど悪い結果にはならないのは、初めてのことではない」として、実際に関税が課されなかったとしても驚きではないとの見方を示し、次のように続けた。「(トランプ大統領の)気が変わるのも初めてのことではない。私はトランプ大統領が何か言うたびに驚くような首相ではない」
危機に対処する際に、自由奔放で思いつきの戦術に頼る人々は、冷静で慎重かつ思慮深い方法を重視すべきとする基本的な危機管理法を軽視している。企業経営の世界では、幹部がトランプ大統領の危機管理法に倣えば、悪い状況をさらに悪化させる可能性が高い。


