真夏日が続く中、公園のベンチに座った会社員が急に立ち上がれなくなった。頭がガンガンと痛み、吐き気も感じる。明らかに熱中症の症状だが、「病院に行くほどではない」と水分補給だけで済ませてしまう——。こうした光景は、夏になると珍しくないだろう。
ヘルステクノロジーズ株式会社が全国20〜70代の男女867人を対象に実施した熱中症に関する調査によると、熱中症を経験した人の約9割が医療機関を受診していない実態が明らかになり、多くの人が適切な医療ケアを受けずに過ごしている現状が浮かび上がった。
「頭痛」が6割超で最多、軽視される危険性
調査で熱中症の症状として最も多く報告されたのは「頭が痛い」で64.5%。次いで「頭や身体が火照る」が51.0%、「吐き気がする」が41.3%と続いた。これらの症状は日常的な体調不良と似ているため、熱中症として認識されにくい可能性がある。

しかし、実は「頭痛」や「吐き気・嘔吐」といった症状は、日本救急医学会が定める熱中症の重症度分類において、Ⅱ度に該当する注意すべき重要な兆候だ。Ⅱ度は、気づかぬうちに重症化してしまう可能性があるため、速やかな医療機関の受診や医療者の判断が求められる状態とされている。
一方、「めまい」や「立ちくらみ」などの症状は、Ⅰ度に該当する比較的軽い段階のサインだが、この時点で早期に適切な対応を行うことが、重症化を防ぐための重要なポイントとなる。多くの人が報告している「頭痛」は、実は既に医療機関での対応が必要な段階に達している可能性が高いのだ。

屋外だけでない熱中症リスク
熱中症が発生した場所については、「屋外」が66.8%で最多だったものの、「屋内」も33.2%と3分の1を占めた。この結果は、熱中症が炎天下での活動時だけでなく、エアコンの効かない室内や湿度の高い環境でも起こりうることを示している。

実際、総務省消防庁の2024年のデータでは、熱中症による救急搬送の発生場所で最も多かったのは「住居」で38.0%を占めており、屋内での熱中症が深刻な問題となっていることが裏付けられている。特に高齢者や乳幼児の場合、室内でも熱中症になるリスクが高いとされているが、「室内だから安全」という思い込みが、かえって対策を怠る要因なっている可能性もある。



