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2025.07.11 15:15

CBDグミ「THC混入」事件の本質──問われる業界の覚悟と自治のかたち

nang nang / Shutterstock.com

厚労省が“例外的”に公表した背景

厚労省は法改正前までは、CBD製品にTHCの検出があった場合、「大麻成分THCを含有する製品について」という形で行政的な発表を行ってきました。

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しかし、法改正後、明確にTHCの上限値が定められ、国としては企業名や商品名の公表を慎重に扱う方針をとってきたと認識しています。

しかし今回、厚労省が企業名・商品名を明示するプレスリリースを出したことは極めて異例であり、「悪質な事案」としての扱いであると受け取るべきだと考えます。

意図的な混入の疑い、または過失とは言えないほどの製造管理の不備があったという認識が行政側にあったのではないかと推測されます。

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THCの厳格な上限値──なぜここまで厳しいのか

今回の法改正にともない、世界的に見ても非常に厳格なTHCの残留基準が導入されました。
この背景には、単に科学的なリスク評価というより、「意図的に違法な製品を出そうとする事業者を排除する」という政策意図があったのではないかと私は考えています。

確かに法の建付けとしては、医療用大麻製剤を合法的に施用できるようにするために、大麻由来成分であるTHCを大麻取締法から麻薬及び向精神薬取締法に移し、制度上の整合性をとる必要がありました。

一方で、現実には「所持罪しか存在しないことが捜査の障害になっている」とする捜査機関や有識者からの意見があったことも事実であると認識しています。

大麻関連の検挙者数は年々増加し、さらに合成カンナビノイドを含む“大麻グミ”の社会問題化などを踏まえ、政府・行政は「一度市場を焼き払って、まともな事業者だけを残す」という意図のもと、THCの上限値を極限まで引き下げたのではないかと私は見ています。

これは、いわば“焼野原作戦”です。

業界にとっては厳しく過酷な対応にも見えますが、行政としてはまず違法性のある事業者を徹底的に排除し、その後に信頼できるプレイヤーとともに市場を再構築していくという戦略的な意図があったのではないかと私は理解しています。

次ページ > CBD事業者に求められる対応──恐れるのではなく備える

文=柴田耕佑

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