私たちは「ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」から何を学べるのか

第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展(Photo by Simone Padovani/Getty Images)

第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展(Photo by Simone Padovani/Getty Images)

世界最大級の建築の国際展覧会「第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展」が、5月10日から11月23日まで開催されている。

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各国の建築関係者がヴェネチアへ集うなか、建築系スタートアップVUILD CEOの秋吉浩気は、サテライトへの出展のため初めて現地へ足を運んだ。日本館のキュレーターを手がけた青木淳の後援会による、40歳以下の建築家向けの研究渡航支援を受けての視察でもある。

そこで彼が実感したのは、建築界の潮流に限らず、世界をフィールドに活動していくための姿勢だったという。


ヴェネチア・ビエンナーレといえばアートのイメージが強いかもしれないが、1895年に開幕した同芸術祭は、音楽、映画、ダンスと部門が増えていき、1980年に建築部門が独立。2000年以降は、美術展と交互に国際建築展が開催され、どちらも、参加各国によるパビリオン展示と、総合キュレーターによる企画展により構成されている。

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今回、総合ディレクターを務めたイタリア生まれの建築家・エンジニアのカルロ・ラッティは、「Intelligens. Natural. Artificial. Collective.(インテリジェンス:自然知・人工知・集合的知)」をテーマに設定。気候変動に対して、建築界はこれまで主に炭素を抑えることで対応してきたが、今後は“あらゆる知性”の協働を通して、いかに新しい解決策を生み出せるかを問い掛けた。

これに対し、パビリオンでは各国が、企画展では世界中の研究者が、さらにサテライト会場では、約200組の建築事務所など実務者が展示を行った。

秋吉は、ベルリンでの表彰式、チューリッヒやロンドンでの講演会などを経て内覧日に合わせてヴェネチア入り。「街が建築家であふれかえっていた」という当日の様子を次のように語る。

「OMAパートナーの重松象平さんがNYの巨匠達を紹介してくれたり、僕らの隣で展示をしていたチリの建築家アレハンドロ・アラヴェ(2016年にプリツカー賞受賞)が会場の外でコメントをくれたり。ロンドンで会えたザハ・ハディッド・アーキテクツ代表のパトリック・シューマッハが、深夜の討論会に誘ってくれたり。世界が広がる機会でした」

主語を自然から人間へ

秋吉率いるVUILDは、サテライト会場で、現在進んでいる木造スタジアムと14階建ての木質マンションのプロジェクトを、パートナーの協賛を得て出展。「人類の生成力の再生を通して、いかに地球環境と地域再生ができるか」という視点を提示した。

VUILDの展示前にて。左から、石川財団理事長の石川康晴、VUILD 秋吉、建築家の藤元壮介、JINS CEOの田中仁 (写真提供:秋吉浩気)
VUILDの展示前にて。左から、石川財団理事長の石川康晴、VUILD 秋吉、建築家の藤元壮介、JINS CEOの田中仁 (写真提供:秋吉浩気)

「近年は、サステナビリティの考えを発展させたリジェネレーションの重要性が示されるようになりましたが、いずれも“自然が環境を再生する”という視点で語られています。それに対し、僕たちは主語を人間にし、“人間が生み出す力”を再生することで自然や地域への影響を与えることができるのではないかと問いかけました。

今展のテーマに合致していたこと、また、仮想提案や仮想プロジェクトの展示が多いなかで、既に社会実装しているものの展示だったので、実務家としてのスピードと量に驚かれるなど、確かな爪痕を残すことができました」

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文=守屋美佳

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