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2025.07.06 10:00

グローバル企業を変革するデジタル革新の新たな波

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グローバル企業は今、段階的なアップグレードではなく指数関数的な変化によって定義される新たな転換点に直面している。人工知能(AI)、量子コンピューティング、エッジインフラ、Web3などの新興技術は、単に企業の働き方を変えるだけでなく、可能性そのものを再定義している。

そのペースは驚異的だ。グローバルなデジタル変革への支出は2027年までに3.9兆ドル(約561兆5000億円)に達すると予測されており、企業はより高い俊敏性、よりスマートな自動化、スケール可能なイノベーションを約束する技術に多額の投資を行っている。印象的なことに、技術導入をリードする企業は現在、株主総利回り(TSR)において同業他社を2倍から6倍上回っている

以下に、実際の使用例とデータ主導の洞察に裏付けられた、今日企業を変革する4つの主要な変革力と、企業がそれについて何をすべきかを述べる。

1. AI:意思決定を支える知能層

AIはもはや実験的なものではない。現在、企業の56%が少なくともひとつのビジネス機能にAIを組み込んでおり、これは前年比で大幅な増加である。カスタマーサービスの自動化からサプライチェーンの最適化まで、その影響は測定可能である。

たとえば、大手小売業者はAI駆動のロジスティクスシステムを使用してサプライヤーとの交渉を自動化し、業務を合理化し、遅延を最小限に抑えている。これは単なるイノベーションのためのイノベーションではない。優れた業務とは何かの概念そのものを変えているのだ。

それでも私たちは、まだ表面をなぞっているに過ぎない。エージェント型AI(自律的に行動するAI)が牽引力を得るにつれ、次の変革の波は自動化を超えて創造的問題解決、製品イノベーション、さらには戦略計画にまで及ぶ可能性が高い。ますます、AIは現代企業の思考、行動、競争の中心に見えるようになっている。

2. 量子コンピューティング:複雑な問題に挑む破壊的技術

量子コンピューティングは間違いなくまだ初期段階にあるが、その長期的な潜在能力は破壊的な突破以外の何物でもない。データをバイナリー(二進)ビットで処理する古典的コンピューティングとは異なり、量子コンピューターは同時に複数の状態で存在できる量子ビット(qubit)を使用する。これにより、現在最も強力なスーパーコンピューターでも手の届かない複雑な問題を解決できる。

高リスク業界の企業はすでにその可能性を探っている。ゴールドマン・サックスは、量子コンピューティングを高度なリスクモデリングとポートフォリオ最適化の次なる飛躍として特定している。製薬分野では、企業が量子シミュレーションを使用して、前例のない精度で分子相互作用をモデル化することにより薬物発見を加速している。

IBM(アイビーエム)、D-Wave(ディーウェーブ)、Rigetti(リゲッティ)などの量子コンピューティングリーダーとの初期段階のコラボレーションは、各組織が暗号化、ロジスティクス、サプライチェーン最適化などの分野で量子の実用的応用をテストすることを支援している。IBMのQuantum Network(クアンタム・ネットワーク)には現在、かつて理論的と考えられていたユースケースを実験している200以上の企業と機関が含まれている。

商業規模での展開はまだ数年先であるが、量子R&D(研究開発)への企業投資は急速に成長している。グローバルな量子コンピューティング市場は、2040年までに年間最大8500億ドル(約122兆円)の価値を生み出す可能性がある。先見性のある企業にとって、今こそ概念実証を探求し、遠くない将来に競争優位となりうる量子対応戦略を開発する時である。

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翻訳=酒匂寛

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