カンフーにおいて、「コブラのような攻撃」という表現は、スピードと精度を表す。そしてこの2つは、ヘビの世界に確かに実在する特性だ。ヘビの多くは、齧歯類や鳥類などの小型の脊椎動物を捕食している。そうした獲物はどれも、体のサイズのわりには驚くほどすばやい。
だが、一般に信じられている話とは異なり、ヘビ界最速の攻撃者はコブラではない。純粋な攻撃スピードという点でいえば、アフリカに生息する毒蛇パフアダー(Puff adder、学名:Bitis arietans)に敵うヘビはほとんどいない。パフアダーの危険さはアフリカでよく知られているが、その評判は伊達ではない。
アフリカでは、ヘビにかまれて死亡する事故の大多数はパフアダーによるものだ。このヘビは待ち伏せ攻撃で獲物を襲い、その攻撃はスピードと精度を兼ね備えている。その攻撃スピードは、秒速19フィート(約5.8m)という猛烈な速さに達することもある。
参考までに言っておくと、一般的な人間のまばたきの継続時間は200ミリ秒ほどだ。パフアダーの牙がターゲットに到達するまでには、ほんの90ミリ秒足らずしかかからない。
つまり、パフアダーはまばたきよりも速く攻撃できるということだ。
しかしパフアダーは、攻撃の速さという点では危険極まりないものの、ロコモーション(動物が環境のなかを物理的に動きまわるプロセス。移動運動)に関しては最速というわけではない。陸上と空中における最速を誇るヘビたちがいる。
陸上最速のヘビ「ブラックマンバ」
陸上でのスピードにかけては、ブラックマンバ(Black Mamba、学名:Dendroaspis polylepis)ほど速いヘビはほとんどいない。アフリカのサハラ以南に生息するこの細くて長いヘビは驚くほど機敏で、短距離なら時速9~12マイル(約15~20km)のスピードに達する。陸上では世界最速のヘビだ。
ネットを検索すると、ヨコバイガラガラヘビ(別名:サイドワインダー)が世界最速のヘビだとする結果が出てくるかもしれないが、だまされてはいけない。それは、ネット上に広く根づいている誤解だ。横ばいは、砂漠のもろい砂の上を移動するには効率的な方法だが、とりたてて速いわけではない。生体力学研究では、ヨコバイガラガラヘビの地上での速度は時速2.2マイル(約3.5km)前後が上限であることがわかっている。
対するブラックマンバは、なめらかな蛇行運動と強力な筋肉の協調のおかげで、開けた地面を驚くほどのスピードで移動できる。その動きは速いだけでなく、制御された慎重なものでもある。



