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2025.07.02 13:00

​​王者ネトフリを追撃、日本ストリーミング界の巨人「U-NEXT」をつくった男

U-NEXT HOLDINGS 代表取締役社長CEO 宇野康秀(Photo by Jun Sato/WireImage)

U-NEXT HOLDINGS 代表取締役社長CEO 宇野康秀(Photo by Jun Sato/WireImage)

2021年、日本のほぼ全ての主要メーカーのテレビのリモコンに、動画ストリーミングサービスU-NEXTの専用ボタンが搭載された。それ以来、同社サービスの国内市場シェアは、アマゾンのプライム・ビデオを追い抜き、ネットフリックス最大のライバルに浮上したことが、調査会社GEMパートナーズのデータで示されている。

2月時点で460万人が加入するU-NEXTは、世界で数億人の視聴者を抱えるグローバルのストリーミング大手と比べれば小規模だが、TBSやテレビ東京などの国産コンテンツのラインナップでは屈指の規模を誇っている。同社はほかにもハリウッドの最新作や音楽ライブの配信、プレミアリーグのサッカー中継、人気ドラマの『ホワイト・ロータス』に加え、電子書籍や漫画、雑誌のオンラインアクセスを提供している。また、加入者には映画館のチケット購入や最新作の視聴に使えるポイントが毎月付与される。

このようなアプローチにより、上場企業のU-NEXTホールディングス傘下のU-NEXTは、日本での地位を確固たるものにした。しかし、同社の社長兼CEOで61歳の宇野康秀は、波乱に満ちた歴史を経てU-NEXTを時価総額26億ドル(約3730億円)の大手に押し上げた後も、さらなる高みを目指している。彼はまず、2035年までに売上高を現在の3倍以上となる1兆円に引き上げることを決意している。

「私にとって、それは単なる数字ではないのです」と、目黒駅近くの本社にある質素なオフィスで取材に応じた宇野は語った。「年率10%の成長を維持できれば、1兆円の目標は達成可能です」

最近の業績を見る限り、U-NEXTはその軌道に乗っている。2024年8月期の同社の決算は、2桁台の成長を記録し、売上高が前期比18%増の3268億円、純利益も同40%増の154億円だった。同社は今期もその勢いを維持する見通しで、売上高は3600億円、純利益は167億円を見込んでいる。

強気の投資家たちはここ1年でU-NEXTの株価を40%以上も押し上げ、それに伴い宇野の保有資産も同程度の割合で増加した。フォーブスの6月3日時点の推定で保有資産が16億ドル(約2320億円)の宇野は、日本の長者番付で34位にランクインしている。

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U-NEXTには、エンタメ事業以上に営業利益に貢献しているものの、あまり知られていない事業もある。同社は、全国の店舗やレストラン、美容院、ホテル、病院など約86万施設に、BGMサービスやPOS端末、ITクラウドサービス、配膳ロボットなどを提供している。また、企業や家庭向けにブロードバンドや再生可能エネルギーの提供も行っており、最近では決済サービスや不動産事業にも進出している。

専門家は、売上の大半をサブスクリプションや長期契約から得ているU-Nextが、国内外の不況の影響を受けにくいと分析している。「売上のほぼ8割が継続的な収益だ。このような業態は顧客数の増加につれて、継続的な売上成長が見込める」と、アイザワ証券のアナリストである高橋直人は4月の投資家向けレポートに記している。

しかし、宇野のU-NEXTの事業にかける思いは、単なる数字の達成にとどまらない。彼はこの会社を日本企業の象徴的存在にすることで、自らのレガシーを確立したいと考えている。「私は、この会社を世の中から必要とされる日本を代表するものにしたいとよく話しています。人々に知られ、信頼され、日本人が高い期待を寄せ、愛着を持てる会社にしたいのです」と宇野は語る。

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編集=上田裕資

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