働き方

2025.07.02 08:00

なぜ優秀な社員ほど辞めてしまうのか? 4つの原因と企業がとるべき対策

Shutterstock.com

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米調査会社リーダーシップIQの調査によると、いい仕事をしているのは社員の36%にすぎないと管理職は考えているという。さらに見過ごせないのは、こうした優秀な従業員は往々にして業績が振るわない同僚よりも仕事に対する思い入れが少なく、労働力全体を脅かす危険なサイクルを生み出しているという点だ。

これらの調査結果は、企業にとって痛烈な警鐘だ。負荷が最も大きく、困難な問題を解決し、組織の成功を牽引している少数の従業員は、時として退職を検討する可能性が最も高い。

1. 重荷を背負う優秀な従業員

たいていの組織では、素晴らしい仕事をする36%の従業員は自分の仕事を完璧にこなすだけでなく、業績の低い64%の従業員の分を補っている。優秀な人は残業して他の人が作った問題を解決したり、締め切りが迫っているときに追加のプロジェクトを引き受けたり、同僚から頼られる非公式なメンターや問題解決者としての役割をこなしている。

そこそこの業績の人は与えられたタスクをこなすが、できる人は同僚が成功するように支援し、困難な業務に自ら志願し、問題をチーム全体の学習の機会に変えるなど、本来の業務以外の重要なことにも取り組む。だが、このような高水準の従業員が全体の3分の1にとどまる場合、優秀な人は組織の生命維持装置になる。そして生命維持装置はどんなに強力なものであっても、絶え間なくプレッシャーがかかるとやがて壊れてしまう。

2. 認識の矛盾

その原因の1つが、認識の矛盾だ。業績の高い人は、その卓越した仕事が賞賛されるよりもむしろ「期待されているもの」と見なされることが多いと報告する。一方で、管理職は出来の良くない従業員の指導に多くの時間を費やすため、業績の低い人が不釣り合いなほどポジティブな注目を浴びる。これは月並みな能力が注目され、卓越した能力が当然視されるという、インセンティブが逆に働く構造を生み出す。できる人は不釣り合いなほど多くの責任を背負っているにもかかわらず、認められていないと感じるようになる。そして、仕事に対するやる気が減ったり、退職したりする原因となる。

3. 業績に対する責任の空白

もう1つの重要な要因は、低い業績に対して責任が問われないことだ。期待されるレベルに達していない仕事に対して何の責任も求められない場合、業績の高い人があらゆる問題の当然の解決者となる。こうした状態では、できる人が問題の後始末をし、能力の格差をカバーし、能力が十分でない人が多いにもかかわらず、組織の目標が達成されるように取り組むことになる。そして、知らず知らずのうちに業績の低い人を支援する「業績の手助け」を生み出す。

業績の高い人は一貫して、管理職が従業員に業績に対する責任を持たせているか疑わしいと報告している。できる人は、同僚が責任を問われることのない平均以下の仕事をするのを横目に、他の従業員の及ばない点を補うために仕事量を増やしている。

4. キャリアコントロールの危機

他にも憂慮すべき点がある。優秀な人は、自分のキャリアの成功は自分ではコントロールできない要因に左右されていると感じている。常に素晴らしい結果を出しているにもかかわらず、昇進のチャンスが自分よりも能力の低い人に回っているのを目にしている。また、業績の低い人の給料が同じように上がり、実力を完全に無視したような組織の決定も目の当たりにしている。心理学者が「結果の責任を内的要因に求める考え方」と呼ぶものを欠いている状態は、離職の可能性を強く示すものだ。業績の高い人は、優秀であることが昇進などにつながらないと結論付けると、通常、優秀であることは努力に値しないと判断するか、優秀であることを認めてくれる組織を探す。

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翻訳=溝口慈子

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