イスラエルがイランに対して攻撃を仕掛ける以前から、エネルギーの価格と供給は、ロシアとウクライナの間で続く戦争の影響を受けていた。米国がイランの核施設3カ所を空爆すると、イランはホルムズ海峡を封鎖すると宣言したが、直ちにそれを撤回した。イスラエルとイランの停戦合意が24日に発表されると、エネルギー価格は当初の予想ほど急騰することなく安定化したが、最近の基準からすると依然として高い水準にある。北海ブレント原油先物は10%以上上昇し、1バレル76ドル(約1万1000円)を超えた。欧州ではディーゼル燃料が15%近く上昇した。
イランがイスラエル中部アシュドッドの火力発電所と北部ハイファの製油所を標的としたように、ロシアとウクライナも互いの重要な施設を攻撃の目標としている。この傾向は、ウクライナがロシア産天然ガスの欧州への輸送を停止した年初から特に強まっている。実際、ウクライナはロシア西部ブリャンスク州のエネルギー貯蔵施設や貨物鉄道から首都モスクワ近郊のトゥーラ州や南部スタブロポリ地方の大規模な肥料工場に至るまで、同国の重要な施設に対するドローン(無人機)やミサイル、爆弾による攻撃を激化させている。一方、ロシアはウクライナの黒海沿岸の港湾施設や農業物流拠点に対する爆撃を強化している。
2022年2月にロシアがウクライナへの全面侵攻を開始すると、両国は同年7月、トルコと国連の仲介の下、黒海を通じたウクライナ産穀物輸出の保護に向けて協議した。だが、その協定は食品生産の原材料費を安定させるには至っていない。報道によると、ウクライナ南部のオデーサ、ピウデンニー、チョルノモルシクの港湾施設はロシアの軍艦を攻撃するドローンの発射に利用されており、ロシアはこれらの港に対する攻撃を続けている。これにより、穀物倉庫も攻撃を受け、協定の内容とはまったく逆の影響が及んでいる。
世界銀行のデータによると、今年第1四半期の肥料価格は世界全体で前年同期比11%上昇した。農作物に不可欠な尿素などの窒素系化学肥料の価格は20%以上上昇し、カリとリン酸はそれぞれ18%と20%値上がりした。報道によると、ロシアの窒素系肥料メーカー「アゾト」のトゥーラ州ノボモスコフスク工場とスタブロポリ地方ネビンノミッスク工場は最近、ウクライナのドローン攻撃により、操業の一時的な停止に追い込まれた。同社はフランスとドイツの窒素系肥料の年間消費量に匹敵する生産量を誇る。ウクライナはこれまで肥料工場を標的にしたことがなかったため、攻撃の真の理由については数多くの議論が巻き起こっている。しかし、理由が何であれ、世界の食料安全保障と肥料市場は深刻な二次被害を受ける可能性が高い。



