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2025.07.01 11:00

顔出しもSNSも不要 AI活用し月収1400万円を稼ぐ「匿名」起業家の新常識

Terroa / Getty Images

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2024年初め、当時27歳だったグレゴリー・クックは何かの顔になるつもりなどなかった。クックはすでに起業家として成功も失敗も経験していた。その数年前、クックは従業員42人を抱えるデジタル分野の代理店を経営し、英国各地にいる顧客のウェブサイトをデザインして成功を収めていた。事業は利益を出していたが、プレッシャーはクックを蝕んだ。会議で週末が潰れたり、夕食の時間に顧客からの電話に対応したりした。結局、燃え尽きてしまったクックは会社をたたまざるを得なくなった。

クックが2024年に起業家として再起したとき、それまでとは違うアプローチをとった。ChatGPTとCanva(キャンバ)を使ってシンプルなPDFを作成し、商品認知から購入までをまとめて自動化し、オンラインで販売した。クックが筆者に語ったところによると、Zoomミーティングに出たり、自分が登場するYouTubeチャンネルを作ったりはしなかったが、同年5月までにクックはすでに70万ドル(約1億円)以上の収益をあげていた。

生成型AIとオートメーションを活用してビジネスを構築しながらも、世間向けのイメージやパーソナルブランドを持たず、往々にして多くのフォロワーも持たないクリエイター、より正確には独自に活動するデジタル起業家が増えつつあり、クックはそのひとりだ。こうしたクリエイターのモデルは「フェイスレスオートメーション」と呼ばれることもあるが、クックは「AIアセットファーミング」という言葉を好む。これは、映像に登場することなく、AIを利用することで自分の知識を収入につながる資産に変えるというものだ。

「以前はチームを立ち上げて自分が表に立つことが唯一の道だと思っていた」とクックは語る。「今はシンプルな方が事業拡大しやすいと考えている」。

顔出し不要、フェイスレスでも高い収益

クリエイターが登場しない、AI生成の動画という新たな世界に身を置くのはクックだけではない。18歳のときにアフガニスタンに派遣された英陸軍退役軍人のアシュリー・ケンプは何年も従来のビジネスアイデアを追い求め、そのほとんどが失敗した。ケンプは2024年に初めてフェイスレスの製品であるアフィリエイト・マーケティングのデジタルガイドを発売した。このガイドはすべてAIツールで制作され、アバタージェネレーターを使った短編コンテンツで宣伝した。発売から3カ月もせずに毎月10万ドル(約1400万円)以上の収入を生み出すようになったと、ケンプはインタビューで語った。

パッシブインカム(受動的収入、不労所得)コミュニティ

クックとケンプは共に、ライフスタイルについてのブログが溢れかえり、クリエイターがカリスマ性を示さなければならないことが多い、インフルエンサー経済とは対極といえるビジネススタイルの普及の一端を担ってきた。そしてそうしたビジネスを展開しているのはクックとケンプだけではない。

Passive Income(パッシブインカム)』のようなRedditのフォーラムやYouTubeのオートメーションのコミュニティでは、AIを使った音声付きの動画から広告収入を得るフェイスレスの金融チャンネルやAIで作られたNotionテンプレートを販売するオンラインショップ、本物の人間が登場することのないフェイスレスのTikTokアカウントで数千ドルもの副収入を稼ぐ人など、似たような話がたくさんある。

彼らのやり方はどういうものだろうか。個々の戦略は異なるが、モデルはほぼおなじみのパターンに従っている。まず、ChatGPTやCanva(キャンバ)、Tome(トーム)などのツールを使って、電子書籍やスクリプト、プレゼンテーションなどの製品を制作する。次に、それらの製品をGumroad(ガムロード)やStan Store(スタンストア)、Kajabi(カジャビ)などのプラットフォームにアップロードする。最後に、Synthesia(シンセシア)のようなプラットフォームのAIアバターによって生成されることが多い短編コンテンツを使ってトラフィックを誘導する。

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翻訳=溝口慈子

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