天然ウラン鉱石に含まれるウラン235は約0.7%のみで、非核分裂性同位体が残りの99.3%を占める。そこで、まず鉱石からウランを抽出・精製し、気体化合物である六フッ化ウラン(UF6)に転換する。六フッ化ウランを遠心分離機に投入すると、シリンダーの回転による遠心力で質量の重い非核分裂性同位体が外側に押し出され、他のウラン同位体よりわずかに軽いウラン235の気体が中心部に集まって相対的に濃縮される。中心部に集まったガスを抜き取って次の遠心分離機に投入し、同じ工程を繰り返すことで目的とする濃度まで高めるのがウラン濃縮だ。
原子力発電で使用する核燃料のウラン235濃度は、3~6%で十分である。20%以上まで濃度を高めたものは、科学研究や放射線治療に使われる。原子爆弾の製造には90%の濃度が必要となる。IAEAの2022年の報告書によれば、イランはこれまでに60%濃縮のウラン235を400kg製造したとみられており、これは民生用としては異例の量となる。
空爆現場に残る危険物質
ウランは自然界で最も重い元素のひとつだ。遠心分離機に投入される六フッ化ウランには化学的毒性と放射線活性があるが、空気より重いため、遠心分離機が損傷した場合に漏れ出した六フッ化ウランは下方へと沈殿し、低地に蓄積する。
ただし、六フッ化ウランは常温で五フッ化ウラン(UF5)の白い固体粉末とフッ素に分解する。気体のフッ素(フッ素ガス)は毒性が極めて強く、水と結合すると強酸性のフッ化水素(HF)を生成し、環境と健康の両方にリスクをもたらす。
ウランの粒子や塵については、空気中や地下水中を短距離しか移動しない傾向がある。ウランは水にほとんど溶けない。また、遊離ウラン原子は酸素など他の元素とすぐに反応して重い化合物を生成するため、全体的に移動性や汚染リスクは低い。
米軍の攻撃後、IAEAとイラン当局の両方が、敷地外の放射線量に変化はなく、放射性物質が放出されたとしても地下にとどまり、地表には到達しなかったと報告している。


