6月21日の米軍によるイランの核施設への空爆をめぐっては、放射能汚染の可能性や環境リスク、深刻な健康への影響を懸念する声が多く上がっている。イラン中部にあるフォルドゥとナタンズのウラン濃縮施設には大型バンカーバスター(地中貫通爆弾)が投下され、イスファハンの核研究施設は通常爆弾とミサイルの標的となった。
ここで重要な留意点は、核施設を爆弾が直撃しても核爆発は起こらないということだ。原子爆弾は、厳密に設計されタイミングを見計らった特定の条件下で初めて超臨界質量に達し、核連鎖反応を起こす。無作為の爆発は、核分裂性物質を変形させるか崩壊させるだけだ。
これまでのところ、フォルドゥとナタンズの地下施設内部の損傷の程度について確かなことはわかっていない。衛星画像からは、施設周辺にがれきが散乱し、爆弾によってできた穴がいくつか開いているのが確認できる。国際原子力機関(IAEA)は声明で、フォルドゥほど堅牢ではないナタンズの地下構造物は「広範囲にわたり損傷した」との見方を示した。
一方、米国防総省の国防情報局(DIA)がまとめた初期評価に基づく米CNNの報道によると、フォルドゥの核施設は「表面的には大きな損傷」を受け「入り口が封鎖された」ものの、地下施設の完全破壊には至らなかったとみられる。米紙ニューヨーク・タイムズも「地下施設は崩壊しなかった」と伝えている。
イスファハンについては、18棟の建物が完全に破壊され、その他の設備も「甚大な被害を受けた」と米シンクタンク科学国際安全保障研究所(ISIS)のデービッド・オルブライト所長の言葉を引用してCNNが報じている。
ウラン濃縮、核兵器製造には不十分
2つの地下施設にはウラン濃縮用の遠心分離機があり、特に核分裂性同位体であるウラン235(U-235)の濃度を高める作業が行われていた。イスファハンの施設では濃縮されたウラン235粉末から核燃料を製造していたが、核兵器転用の可能性が指摘されていた。



