私たちは「指数関数の時代」に生きているが、自分自身については時代遅れのモデルを用いている
テクノロジーの世界では、私たちは指数関数的な成長を受け入れてきた。ムーアの法則。AIの処理速度。デジタル統合。私たちは、コンピューティング・パワーが18~24カ月ごとに倍増し、それを糧としてイノベーションが起こることを受け入れている。しかし、自分自身の成長、つまり充実感、影響力、喜びとなると、私たちはまだ直線で物事を考えている。ひとつの分野に過剰投資し、それが私たちを支えてくれることを望んでいる。
だが、そうはならない。
ビジネスの世界では、これをより直接的なかたちで目にしたことがあるかもしれない。新しい営業担当者を雇うが、リード(見込み客)の量は増やさない。そうなると、驚くことではないが、営業担当者たちは売上を増やさない。ひとつのレーンで努力を増やしても、それだけでは、指数関数的なリターンを生み出せないのだ。
ハイパフォーマーの多くは、単一栽培(モノカルチャー)のような人生を構成している。集約的で高収量だが、混乱に弱い栽培方法だ。それに対して、3つの次元に沿ったリーダーは、再生可能なパーマカルチャー(持続可能な農業・生活様式)のようなシステムを構築する。それは、多様性、回復力、自立性に富んでいる。
充実の方程式:3つの次元にわたって複利的に増えるリターン
筆者の洞察を紹介しよう。私たちは、「自分(ME)」、「私たち(WE)」、「世界(WORLD)」と筆者が呼ぶような複数の次元に、バランスのとれたかたちで投資をするとき、単に成長するだけではなく、「複利的に」成長する。
3つの次元で人を導く、ということは、自分の時間とエネルギー、注意関心をうまく調整して、次の3つに向けることを意味する。
・自分:個人的なウェルビーイング、明晰さ、エネルギー
・私たち:チーム、家族、人間関係のパフォーマンスと文化
・世界:あなたの幅広い貢献、レガシー、体系的な影響
この3つがそろって動き出すとき、リターンは、ただ足し算で積み上がるだけではない。かけ算で増える。
「自分」の次元における明確さは、「私たち」の次元におけるリーダーシップを強化する。「世界」の次元における(あなたにとっての)意義は、あなたのやる気を増す。「自分」の次元における境界線は、「私たち」の次元における燃え尽きを防ぐ。といったことだ。
充実の方程式は、以下のようにまとめられる:
複利的に得られる利益=(自分+私たち+世界)×調整
これらの次元全体にわたって、より一致させた投資を行うほど、自分が生み出す勢いは増す。そして、その結果は指数関数的に大きくなる。
リーダーシップに対するこうした3つの次元でのアプローチは、内発的動機づけに関するこれまでの研究とも一致している。ダニエル・ピンクが『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか』(邦訳:講談社/原題『Drive』)の中で、「自律性」「達成感」「目的」として概説しているものだ。
これら3つのすべてに投資すれば、単にパフォーマンスが向上するだけではない。私たちは、特に困難な時代を乗り越えるために必要な「持続可能な燃料」を持って、より良く生きることができる。


