ドナルド・トランプ米大統領は、任期をまだ1年近く残すジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の後任人事で、すでに詰めの検討に入っているもようだ。ホワイトハウスと、独立性の高い米中央銀行との対立があらためて浮き彫りになっている。
早期「レームダック」化の懸念
米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は26日、匿名の関係筋の話として、トランプがパウエルの後任を9月か10月、あるいはもっと前に指名する案を練っていると報じた。
パウエルの任期は2026年5月15日までなので、実際にそうなれば任期を少なくとも7カ月残した時点で後任が決まるという事態になる。パウエルが「レームダック」化する時期がかなり早まりかねない。
ここ数十年に限っても、現職FRB議長の後任が任期満了の7カ月以上前に指名されるのは異例だ。
過去40年の歴代FRB議長を振り返ると、ポール・ボルカーは1979年の就任の1カ月前、アラン・グリーンスパンは1987年の就任の2カ月前、ベン・バーナンキは2006年の就任の6カ月前、ジャネット・イエレンは2014年の就任の3カ月前にそれぞれ指名されていた。パウエルも2018年の就任の3カ月前の指名だった。
利下げに慎重な姿勢を崩さないパウエル
パウエルをFRB議長に署名したのは1期目のトランプだが、景気重視で政治的に人気がある利下げの要求をパウエルから一貫して拒まれたため、すぐに不満を抱くようになった。今年、トランプはパウエルの解任をほのめかしたが、法的根拠は不確かだ。トランプはその後、パウエルへの「口撃」に転じ、「愚か者」「間抜け」などと罵倒を繰り返している。
FRBの最も重要な役割は、フェデラルファンド(FF)金利の目標を設定することだ。FF金利は、公式には金融機関同士が一晩で貸し借りする際の金利を定めるものだが、実際には経済全体の貸し出しコストに大きな影響を与える。FRBはインフレの抑制と雇用の最大化という2つの使命に基づいて金利を決める。



