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2025.07.08 11:00

AIで「個別化医療」を加速、Biostate AIが目指すがん治療の最適解

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バイオテクノロジー業界では、人工知能(AI)が膨大なデータセットを分析し、病気の治療において画期的なブレークスルーをもたらすことが期待されている。しかし、意味のある洞察を生み出すためには、十分な規模のデータベースとモデルを構築する必要があり、これには多大なコストと時間が必要だ。

ヒューストンに本拠を置くスタートアップBiostate AI(バイオステートAI)は、この問題の解決に取り組んでいる企業の1つだ。同社は、全ての生物の細胞に存在し、DNA(デオキシリボ核酸)に含まれる遺伝情報をタンパク質に変換する役割を果たすRNA(リボ核酸)を低コストで解析する方法を開発した。

研究者やバイオテクノロジー企業、製薬会社、研究機関は、Biostate AIのプラットフォームを利用することで、採取したヒトの血液や組織サンプル中のRNAを分析するコストを削減できる。その見返りとして、同社はこれらのデータを保持し、構築中のモデルに追加できる。

最終的に同社が目指しているのは、生きた細胞内のすべての分子の挙動を捉え、それらが健康状態や病気、薬物への曝露によってどう変化するかを予測するための計算モデルを構築することだ。これが実現すれば、薬剤開発において大きな飛躍となり、患者一人ひとりに最適化された個別化医療が実現する。

「私たちは、人間を本当に理解するAIを作りたいと考えている」と、昨年Biostate AIをデイビッド・チャンと共に設立したアシュウィン・ゴピナスは語る。「それによって、ある特定の病気に対して、その瞬間にその人にとって最も効果的な治療法が何かを正確に把握できるようになる」

同社が重点的に取り組むがんや自己免疫疾患を含め、多くの病気には複数のバリエーションが存在する。例えば、肺がんは多くの異なる形態をとる。さらに、患者によっては薬に異なる反応を示したり、同じ患者であっても体の状況によって反応が変化することもある。

こうしたあらゆる要素を考慮した治療計画を策定し、パーソナライズした医薬品を提供できれば、患者の治療に劇的な変化をもたらす可能性がある。しかし、そのためには研究者は全ての可能性を網羅したデータモデルを構築する必要がある。それこそが、Biostate AIが目指していることだ。「これは終わりのない挑戦だ。データが多いほど治療結果も改善される」とチャンは言う。

ゴピナスが個別化医療への関心を高めたきっかけは、妻が白血病と診断されたことだった。そのため、白血病の研究に特化したコーネル大学医学部との共同プロジェクトは、彼にとって特に思い入れのある取り組みとなっている。このプロジェクトでは、Biostate AIが自社の骨髄および血液サンプルのデータを活用し、同医学部の研究を支援している。

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編集=上田裕資

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