また、医療機関などで受ける、喉の奥に綿棒を当てられて脳がくすぐられるような感覚のする検査は、自宅で行う簡易的な検査よりもはるかに精度が高い。自宅用の新型コロナ検査キットは「偽陰性率」が非常に高く、仮に陰性という結果が出ても、感染した可能性が完全に排除されるわけではないのだ。
一方で、喉の痛みはかねて新型コロナの可能性がある症状のひとつだったのは確かだ。オミクロン株のすべての派生型では、この症状がさらによくみられるようになっている。裏を返せば、カミソリの刃のような喉の痛みが新型コロナウイルスへの感染で起こったとしても、新しい症状というわけではないだろうし、またNB.1.8.1が過去の変異株と比べて、全体的に異なる、あるいはより重篤な結果を引き起こしていることを示すものでもない。
とはいえ、NB.1.8.1の「NB」が「たいしたことない(no big deal)」の略だと思ってはいけない。新型コロナウイルス感染症では引き続き入院者が出ているし、その一部は亡くなり、それより多くの人が長引く後遺症(long COVID)というひどい悪影響に悩まされている。政治家によって言及されることがあまりなくなかったからといって、新型コロナの脅威が消え去ったわけではないのだ。
NB.1.8.1に関して言えば、ヒトの細胞への結合力が高くなっているという証拠があり、そのため感染力が強くなっている可能性がある。この変異株の急速な拡大は、その可能性を裏づけているように見える。
繰り返せば、カミソリの刃のような喉の痛みという症例がこれまでにどれくらい発生しているのか、そしてそのうちどのくらいの割合がNB.1.8.1によるものなのかは不明だ。それでも、こうした症状を聞いて「自分も体験してみたい」なんて思う人はいないだろう。だからこそ、こうした症状を呈する可能性や、この夏に再び新型コロナの感染拡大が起こる可能性に備えおくべきなのだ。
これまでと同様、科学的な根拠に基づいた予防策を取ることができる。たとえば▽人が多い場所では高品質のマスク(N95など)を着用する▽屋内では換気を十分に行い、空気が清浄な状態を保つ▽手洗いをこまめに、丁寧にする──といったものだ。また、新型コロナワクチンの接種を適切なタイミングで受け、接種状態を最新のものに保っていくことも検討したい。というのも、ワクチンによる免疫の防御は通常、4〜6カ月程度で低下し始めるからだ。
免疫システムをしっかり整えておくことは、カミソリの刃のような鋭い痛みを喉に覚えずにも済むためにも有効である。


