クイーンからジェームズ・キャメロンまで、実は「学術論文」の執筆経験がある有名人たち 

クイーンのブライアン・メイ(右)(Corine Solberg/Getty Images)

クイーンのブライアン・メイ(右)(Corine Solberg/Getty Images)

SF・ファンタジー作家のジョージ・R・R・マーティンは2025年2月、学術論文の共著者に名を連ねたことでニュースになった。

学術論文の著者欄に芸術畑の人物の名前を見かけることは珍しいが、前例がないわけではない。音楽、映画、文学の世界の著名人のなかには、科学者と共同研究に携わったり、自ら研究を行った人物もいる。

マーティンの論文は、彼が編者の一人を務めたシェアードワールド型のSF小説シリーズ『ワイルド・カード』の世界における物理法則についてのものだ。『American Journal of Physics』に2月1日付で掲載されたこの論文は、米ロスアラモス国立研究所の物理学者イアン・トレギリスとの共著であり、『ワイルド・カード』ユニバースをベースに、学生が物理学と数学を学べる内容となっている(この学術誌は、米国物理学協会[AIP]と米国物理教師連合[AAPT]が共同で発行している)。

ジョージ・R・R・マーティン(Taylor Hill/Getty Images)
ジョージ・R・R・マーティン(Taylor Hill/Getty Images)

この論文が話題を呼んでいるのは、物理学の研究成果としてよりも、当然ながら著名な人物が著者であるという事実からだ。有名作家が学術論文を書くのは、そうそうあることではない。ただし、史上初というわけでもない。

『ピーターラビット』の生みの親である絵本作家、ビアトリクス・ポターも、学術論文を著したことがある。ポターの論文は、自身のフィクションの著作に関するものではなく、菌類の研究論文だった。当時はまだ女性科学者が珍しく、リンネ協会(分類学・博物学の研究と普及を目的とした学術機関)は女性会員を認めていなかった。そこで、友人が彼女の代理で研究発表を行い、原稿は改訂のため差し戻された。

ポターは改訂を終えなかったため、現在では論文そのものを読むことはできない。しかしポターの手記やイラストから、彼女が当時(種として)未記載だった菌類を数種発見していたことを、研究者たちは明らかにした。これらの菌類は数十年後、ほかの菌類学者の手でようやく正式に記載された。

アイザック・アシモフは、SF作家であると同時に化学者(1979年にボストン大学教授)でもあった。彼はこの2つの職業を完璧に組み合わせて、存在しない素材に関する完全にフィクションの学術論文を著した。この論文は、学術誌ではなくSF雑誌に掲載されたが、体裁は化学分野の本物の論文とまったく同じだった。また、アシモフは化学を教えていた頃に、教育目的の科学書も多数執筆している。

フィクション作家から目を移すと、俳優のなかにも学術論文に名を連ねる人物がいる。コメディドラマ『ビッグバン★セオリー』で神経科学者の役を演じたメイム・ビアリクは、実際にカリフォルニア大学ロサンゼルス校で神経科学の博士号を取得しているが、彼女の論文は査読つき学術論文にはなっていないようだ(通常、1本の論文の分量は博士論文の1章に相当するので、ビアリクに論文数本分の研究実績があることは確かだ)。

一方、女優のナタリー・ポートマンがハーバード大学で心理学を専攻した学部生時代に執筆した複数の論文は、オンラインで容易にアクセスできる(著者名は、本名のナタリー・ヘルシュラグ)。

ナタリー・ポートマン (James Devaney/GC Images)
ナタリー・ポートマン (James Devaney/GC Images)

科学の学位をもっていない著名人も、時に学術論文の共著に名を連ねることがある。映画監督のジェームズ・キャメロンは、2012年にマリアナ海溝の最深部に到達した最初の人物となり、そこでサンプルを採集した。研究へのこうした貢献から、彼は数年後に探査の結果をまとめた学術論文の共著者となった(サンプルを分析し、論文にするには時間がかかるのだ!)。

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翻訳=的場知之/ガリレオ

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