深夜を過ぎても鳴りやまない演奏
昨年のプレイタイムの来場者は約7万人だったそうだ。このフェスは約20年前に地元有志とアーティストたちが手を取り協力して始まったという。会場も各地の草原を転々として、規模もそれとともに拡大していった。
日本からも即興ラップで知られる「ダースレイダー&ザ・ベーソンズ」など多数のアーティストが参加していた。異国の地で、海外のアーティストとともに、彼らのライブを体験できるのも、このフェスならではの楽しみといえるだろう。
実は、この会場で、以前コラムで紹介したモンゴルの現代写真家インジナーシ・ボルさんと知り会ったのだ。その後、来日した彼と何度も会って話を聞くことになるのも、彼が作品を通して教えてくれた、いまモンゴルで起きている新しい出来事や意想外な事象に、大きな刺激を受けたからだ。
インジナーシさんはマニアな音楽好きで、プレイタイムも常連だ。ステージに上がるアーティストたちも知り合いばかりだという。
会場で見かけたモンゴルの若者たちも魅力的で、好みの音楽ジャンルがひと目でわかるファッションに身を包み、心よりフェスを満喫していることがわかった。彼らの多くは、会場の周囲にテントを張って、そこで寝泊まりしながら数日間この地で過ごすのだという。
一方、筆者はその日、まだ深夜を過ぎても演奏の鳴りやまない会場にいたが、このままここで一夜を明かすのもどうかということで(早朝はかなり冷えるらしい)、そこから近いゲルに車で移動して宿泊した。
翌朝、目を覚まし、ゲルから出ると、リゾートの南側はなだらかな草原の丘陵に囲まれていた。そのとき、はるか遠くの丘の上でバイクにまたがる若い遊牧民の青年が羊の群れを追っている姿を見た。この光景は、インジナーシさんの作品に出てくる現代の遊牧民像と同じものだった。
バイクのあとに羊の群れが白く太い帯のようにゆるゆる移動していくさまを遠目で眺めながら、「そういうことなのか。彼らの現代化した日常は想像つかないことばかりだ」と思ったものである。遊牧民は馬にまたがって放牧するものだと勝手に思い込んでいたからだ。
そんな感慨に浸りながらも、彼方から届くフェスの演奏が地鳴りのようにまだ響いていたことに苦笑した。もうすっかり日は照っているのに、彼らはいつまで演奏を続けるのだろう……。


