しかし2010年までには、契約選手の中心はランナーに縮小され、デイビスによれば同社はチームスポーツへの再参入を試す「ベータテスト」として、野球部門を再構築し、ボストン・レッドソックスのスター選手ダスティン・ペドロイアと契約を結んだという。
そしてその5年後にニューバランスは、スポーツとカルチャーの両方に関心を持つ13歳から34歳までの4億人の消費者層に照準を定め、従来のマーケティング戦略を転換した。同社は、それまでマーケティング予算の70%をGoogle広告やSNSなどのトランザクションベースの広告に投じていたが、それと同じ70%を、スター選手を前面に出す「We Got Now」のようなキャンペーンや、インフルエンサーや他ブランドとの協業に振り向けるようになった。
巨大なナイキやアディダスとの戦い方
それでもなお、ニューバランスはいまだに比較的規模の小さいプレーヤーにとどまっている。調査会社ユーロモニターによれば、2024年の米国のスポーツ用フットウェア市場は500億ドル(約7兆2000億円)規模というが、その約3分の1はナイキが占めており、ニューバランスのシェアは5.6%だった。世界のトップクラスのアスリートの大半がナイキとアディダスの2大ブランドに流れるなかで、デイビス、ニューバランスが広告に起用するアンバサダーを、きわめて慎重に選んでいると説明する。
そして多くの場合、その対象は2018年に契約した当時14歳だった女子テニスプレイヤー、ココ・ガウフのように若い選手になることが多い。
「ニューバランスとの契約は、自然な流れだった」とガウフは語った。先日の全仏オープンを制覇し、四大大会で2度目のタイトルを獲得した彼女は、「彼らは、他のどこよりも先に私に賭けてくれた。その後の7年間の関係には本当に感謝しているし、その間にいっしょに大きく成長できたことを誇りに思っている。彼らはいつだって私の価値観や声、ビジョンを尊重してくれた」と述べている。
ニューバランスはまた、2018年にはバスケットボール界にも鮮やかに復帰した。同社はまず、NBA入りを目指すダリアス・ベイズリーと契約を結んだが、この契約は、NBAドラフトに向けて自主トレーニングを行う彼を「3カ月間のインターンシップ生」として会社に迎えたことでも注目を集めた。その1カ月後には、スーパースターのカワイ・レナードとの契約を獲得した。


