この取り組みにより、ニューバランスのシューズは、かつての「ダッドシューズ(お父さん向けスニーカー)」のイメージを脱却しつつある。コメディ番組の『サタデー・ナイト・ライブ』などで「中年の小太りの白人男性が履く靴」と同社のシューズは揶揄されていたが、米国ではコロナ禍以降にその人気が復活した。2010年に18億ドル(約2800億円)だったアパレルを含むニューバランスの世界の売上高は昨年、その4倍以上となる78億ドル(約1兆1300億円)に上昇している。
同社のグローバルの売上高は特に、2022年から2024年にかけて野球やバスケットボール、フットボール、テニスの4部門で合計27%の成長を記録した。この成長は、ガウフの2023年全米オープンでの初優勝や大谷翔平のドジャースのワールドシリーズ制覇などの時期と重なっている。ニューバランスの同期間における世界のスポーツ用フットウェア部門の売上高は、44億ドル(約6350億円)から66億ドル(約9530億円)へと50%成長したとフォーブスは推計している。
「私たちは、自分たちが今よりはるかに大きな存在になれるとわかっていた。そして、ブランドのストーリーや価値が過小評価されているとも感じていた」とニューバランスの会長のジム・デイビスの息子でもあるCMOのデイビスは語る。
1990年代に「Endorsed By No One」という皮肉めいた広告キャンペーンを展開していたとはいえ、ニューバランスがアスリートとまったく無縁だったわけではない。実際、1980年代初頭には、NBAを渡り歩いたマイケル・レオン・カーを初のバスケットボールアンバサダーとして起用し、数年後には将来殿堂入りするジェームズ・ウォージーと、バスケットボール界で初となる100万ドル規模のシューズ契約を結んでいた。


