英政府が最近公表した調査によれば、英国の採用エージェンシーの48%が現在、候補者の発掘やスクリーニングなどの業務にAIを使用しているという。この動きは、期待と懸念の両方を引き起こしている。
懸念のひとつは、AIツールが人間の偏見をそのまま大規模に再現してしまうことだ。「AIシステムは既存のバイアスを増幅させ、デジタル排除を引き起こし、差別的な求人広告やターゲティングを生む可能性がある」と、会計・コンサルティング企業BDOでプライバシーおよびデータ保護部門を率いるクリストファー・ビバリッジは、最近のブログで警鐘を鳴らした。
一方で、AIを賢く活用すれば、従来の採用プロセスでは見落とされがちだった候補者を特定し、支援できる可能性がある。というのも、テクノロジーによってより多くの応募者を扱いやすくなるからだ。
人材の採用や育成、労務管理などを手がけるHR(ヒューマンリソース)担当者を対象としたAIソリューションをリリースする企業は、皆同じような点をアピールしている。米国では昨年、HireVueが9000万ドル(約129億円)近い売上を達成した。欧州では、年初に2860万ドル(約41億円)を調達したMakiやTest Gorillaなどの企業が急成長を遂げている。
こうした中、イタリア企業の「Skillvue(スキルビュー)」が5月5日、630万ドル(約9億円)のシード資金を調達したことを発表した。同社のプラットフォームは、企業のHR担当者が会社の求める特定の資質や能力に応じて、多数の候補者を評価することを可能にする。
Skillvue共同創業者でCEOのニコロ・マゾッキは、従業員が離れた場所にある店舗や支店に分散している大企業においては、採用の経験やトレーニングを受けていない現場のマネージャーに採用を任せているケースが多いと語る。「これらの企業は、AIプラットフォームを導入することで評価プロセスを標準化できる」とマゾッキは主張する。
Skillvueは、社員のスキルアップやキャリア開発のサポートにAIを活用することで、リテンションを高めることも可能だと主張する。同社の顧客約90社の多くは、従業員が自身のスキルや能力を評価するために同社のツールを使用しているという。



