複雑な概念を一言にまとめられる便利なビジネス用語は、つい日常会話でも使ってしまうことがある。とくにカタカナ語が氾濫するSaaS業界の人たちは、そうした言葉の利用をどう感じているのだろうか。
SaaSセールス特化型転職エージェント「マーキャリNEXT CAREER」は、SaaS業界に転職してきた20〜30代の営業担当者1026人を対象に、SaaS業界でよく聞くビジネス用語に関するアンケート調査を実施した。それによると、同業界でよく聞かれる言葉のランキングは以下のとおりとなった。

1位のKPIはKey Performance Indicator(重要業績評価指標)のこと。業務の進捗状況を測るための基準または目標だ。「このプロジェクトのKPIはMAU10%増」などと使うらしい。「月間アクティブユーザー数が10パー増えたら良しとしよう」という意味だが、なら最初からそう普通に言えばいいと思うが、業界内部の人たちは違う考えらしい。
2位はアジェンダ(議題)、3位はフィードバック(意見や評価)、4位はオンボーディング(新人研修)、5位はスキーム(手法)となった。1位以外は普通の英語単語なので、特別な専門用語というわけではない。
これらの用語がひんぱんに飛び交う職場で半日過ごすと、日常会話でも口をついて出てしまうようだ。プライベートでつい使ってしまったことがあるビジネス用語のランキングは、こうなった。

1位はフィードバック。「お誕生会の件、フィードバック聞かせて」なんて言うのかしら。2位がなんとKPIだ。同窓会で「それってKPIどんな感じなの?」と聞いたという男性の経験談が紹介されていたが、通じたのだろうか。3位はアジェンダ。スキームやオンボーディングなど、どういうシチュエーションで使うのか想像しがたい言葉もある。
どうして特定の業界の人たちはカタカナやアルファベットの業界用語を好んで使うのだろうか。「バッファもたせたスキームのPKIをフィードバックして」は「余裕を持たせたやり方、予定どおりいってる?」と日本語で普通に言ったほうがだんぜん通じやすいはずなのだが、そこには納得の理由があった。アンケートではビジネス用語で話し合う場面で感じたことを尋ねた。

いちばん多かった意見は、横文字が多くて「できる人風」の会話になりがち、というものだった。つまり、自分は仕事ができていると感じて気分がいいということだ。気分よく仕事をすることは大切だ。また、共通言語で会話が進みやすく一体感がある、効率重視の文化を感じるという意見からは、一定の「効能」を示唆している。さらに、わかる人にだけ理解できる「内輪感」があるという意見は、チームのエンゲージメントにコントリビュートするプラグマティックなバリューをインプライ(仲間意識の強化に貢献するという実利的価値を示唆)している。
アメリカから渡ってきた最新のビジネス用語には、最新のビジネス理論から生まれた画期的な概念を獲得するという学習効果もあるだろう。ただ、今と同じようにカタカナのビジネス用語が大量に輸入されて巷に氾濫した時期が1980年代にもあり、当時、そんな言葉を乱用するビジネスパーソンを揶揄する風潮があった。仕事の現場以外で得意げにカタカナ語を連発する人は、周囲から冷ややかに見られている恐れもある。



