富裕層はどのようにして外国で居住権を取得しているのか?
報告書によれば、富裕層の多くは就労ビザ(査証)や家族ビザ、退職ビザ、祖先に関連するビザのほか、出生時に得た第2のパスポート(旅券)などで移住している。居住権や市民権を取得するために投資移住制度を選択する富裕層は、わずか30%程度に過ぎない。
UAEはなぜ富裕層を引きつけるのか?
ヘンリーによると、UAEは「所得税ゼロ、世界最高水準の社会基盤、政治的安定性、そして資本を獲物ではなくパートナーとして扱う規制枠組み」によって移民を歓迎している。2019年に運用が開始されたUAEの投資移住制度、いわゆる「ゴールデンビザ」制度は22年に改訂され、対象範囲が拡大された。
カッツは、多くの富裕層が近年、個人所得税の非課税を求めてUAEに移住していると指摘。だが、米国人は国外に居住していても母国での所得税支払い義務が免除されないため、UAEに移住する米国人は比較的少ないと説明した。
富裕層の流入を狙う米国の「トランプ・ゴールドカード」
UAEに次いで多くの富裕層を引きつけているとされた米国は、今年7500人の流入を見込んでいる。これは主に投資家ビザ(EB-5)によるもので、これにより、米国は500億ドル(約7兆2300億円)を超える外国直接投資を誘致し、国内で数十万件の雇用を創出してきた。
同国のドナルド・トランプ大統領とハワード・ラトニック商務長官は、EB-5ビザに代わる制度として、外国人富裕層向けに500万ドル(約7億2300万円)で米国の永住権を付与する「トランプ・ゴールドカード」を推進している。同長官は、ゴールドカードで20万人もの投資家を引きつけるとしている。トランプ大統領は100万枚以上のゴールドカードの販売を見込んでおり、同ビザが1000万枚発給されれば50兆ドル(約7230兆円)の歳入となり、国家債務を36兆ドル(約5210兆円)解消できるとしている。
ラトニック長官は、11日のゴールドカードに関するウェブサイト開設から数日間で、7万人近くが事前登録したと明らかにした。だが、ヘンリーの広報担当者は、同長官の数字が正しければ、そのうちの大多数は単に詳しい情報を得るために登録したに過ぎず、実際の申請開始を待っている超富裕層(UHNWI)ではないと指摘した。その上で、ゴールドカードが富裕層の全世界の所得に対する税制優遇措置を提供すれば、年間数千枚の販売が見込まれるかもしれないが、現段階では未知数だと述べた。一方、カッツはラトニック長官の数字は「成り立たない」と断じた。なぜなら「純資産の10%以上を移民ビザに費やす人を見たことはなく、通常はその割合は5%程度だからだ。つまり、ゴールドカードを買うには1億ドル(約145億円)の純資産が必要だ」と説明した。実際、それだけの資産を持つ億万長者は全世界でも3万人に満たず、うち約3分の1は永住権を購入する必要のない米国人だ。


