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2025.07.04 16:15

52万部ヒットの『妻のトリセツ』に学ぶ、家庭の平和と子育ての裏黄金律

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『妻のトリセツ』(黒川伊保子著、講談社刊)という稀代の名著をご存じだろうか。脳科学の立場から女性脳の仕組みを前提に夫側からの対策をまとめた、タイトル通りの「妻の取扱説明書」。実に52万部のベストセラーである。

著者の黒川伊保子氏はAI開発者としてヒトの脳の回路をコンピューターに実装する研究を続けてきた人物。人間の思考パターンをデジタルで再現することに取り組み、90年代に早くも世界初の日本語対話ボットといわれる「日本語対話型女性司書AI」の開発に成功している。

そんな黒川氏が男女の脳機能パターンの違いをクリアに解説し、「よりよい男女の対話の在り方」を提案した同書から、以下、子どもをもつ家庭で妻の脳を慰撫することがどれほど子育てにも重要であるかを紹介しよう。


娘の「自我のリストラ」は父親の責任

齢4歳にして一人前の女性脳の自我は、そのまま肥大させると、思春期には驚くほど大きくなる。脳の中で、「自分」が「世界」よりも大きくなってしまうのである。前髪がちょっと決まらないだけで、学校に行きたくないくらいの「大事件」になってしまう。周りの人々すべてが、自分を見ているような気分から、抜け出せないのだ。やがて、無邪気に一歩前に出る気持ち、すなわち、のびやかさを失ってしまう。

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そのまま社会に出れば、仕事の不出来を指摘されただけなのに、人格を否定されたような気がして、気持ちが揺れる。周りからねぎらわれたり、褒められたりしなければ、自己の存在意義が確認できず、不安になる。結果、誰にも認められる「いい子ちゃん」を演じて生きることになり、自分を見失う。

自我が強すぎる女は、本当に生きにくいのである。

少女が大人になるということは、この過剰に肥大した自我が、等身大に見えるまでの道のりだ。客観性を養い、自分が思うほど周りは自分を気にしてはいないことを、娘は思い知らなければならない。

「自分の正論」が、この世の正解のすべてではない。そのことを、深い愛情をもって知らしめることができるのは、父親だけかもしれない。妻と娘が対立したときこそ、その絶好のチャンスなのではないだろうか。

父親がやるべきことは、妻と娘がもめていたら、どちらの言い分が正しいかをジャッジすることではない。「どちらが正しいかは関係ない。お母さんを侮辱した時点で、おまえの負けだ」と娘に告げることだ。

娘は、どんなに反発していても母親を大切にする父親を嫌うことはない。むしろ、父親の強さと頼もしさを知ることになる。

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