この段階までくると、兵器級ウランの下限値である90%まで濃縮を進めるには数週間、場合によっては数日しかかからない。90%という数値に特別な意味があるわけではなく、むしろ高い爆発確率と効率性を示す目安のようなものになっている。
こうした点を理解するには、広島に落とされた原子爆弾のウラン濃縮度が80%程度と比較的低かったこと、しかも燃料のうち実際に核分裂を起こして爆発したのは1.4%にすぎなかったことを知っておくとよいだろう。1発で広島市内の建物の9割を破壊し、十数万人もの命を奪ったこの原爆を「非効率」などと言うのは不条理に聞こえるかもしれない。しかし、もしこの原爆の濃縮度が今日の核兵器の水準(93~95%)であれば、破壊力は格段に大きかったはずだ。
イランの濃縮能力がもたらす脅威
IAEAの最新データによれば、イランがもたらしている潜在的な脅威には疑いの余地がほとんどない。この脅威はとくに、第1次ドナルド・トランプ米政権が2018年にイラン核合意から離脱して以降、高まってきた。「包括的共同作業計画(JCPOA)」と呼ばれるこの合意は、バラク・オバマ米政権下の2015年に締結されていたものである。米国がこの合意から離脱したことを受けて、イランはIAEA査察官との協力を減らし始めた。
2021年、イランはウラン濃縮度を20%から60%へ引き上げる計画を明らかにし、その直後から燃料製造計画に関する新たな情報をいっさい提供しなくなった。2023年初め、IAEAはイラン中部フォルドゥの核施設のサンプルから、83.7%まで濃縮されたウラン粒子を発見した。山中の地下約90メートルにつくられたこの施設は先週、米軍の爆撃機で攻撃された。
さらに2024年後半、IAEAの査察官はイランが60%濃縮ウランの備蓄を急速に増やし始めたと結論づけた。60%まで濃縮したウランは、イラン国内のどの研究用原子炉でも必要とされていないにもかかわらず、IAEAの推定によれば2025年5月までに400キログラム超生産された。これは異常に多い量である。
そこから最も論理的に導き出せる結論は、最も好ましくない結論でもあった。米国の党派的な偏りのないシンクタンク、科学国際安全保障研究所(ISIS)による分析で指摘されているとおり、これほど大量の濃縮ウランに民生目的の用途はなく、交渉の取引材料としてすら過剰なものだった。ISISは、イランの意図は「可能な限り迅速に大量のWGU(兵器級ウラン)を生産する準備を整えることにある」と結論づけざるを得ないとしている。


