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2025.06.27 16:45

映画「F1/エフワン」F1人気沸騰の米国が仕掛ける地上版トップガン

映画『F1®/エフワン』ではブラッド・ピット自らがレーシングマシンに乗り込み主人公を演じる © 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

現役復帰を果たした主人公ソニーは…

物語は、主人公のもとに、かつてF1®でともに闘ったある人物が訪れるところから始まる。

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30年前、若手レーサーとして将来を嘱望されていたソニー・ヘイズ(ブラッド・ピット)は、レース中のアクシデントがきっかけで、一度も優勝することなくF1®の舞台から去った。ギャンブルに溺れ、一度の結婚破棄と二度の離婚を経て、いまはアメリカで臨時雇いのレーサーとして「デイトナ24時間レース」などに出場していた。

ワンボックスカーで車上生活をしているソニーのもとに、かつて同じ時代にF1®を走っていたルーベン・セルバンテス(ハビエル・バルデム)が現れる。ルーベンはいまやF1®の世界で「エイペックスGP」のオーナーとなっていたが、チームはいまだ入賞も果たせず、売却の危機に瀕していた。主戦ドライバーにも逃げられたルーベンは、その後釜としてソニーに白羽の矢を立てたのだった。

主人公のソニー・ヘイズ(ブラッド・ピット)は、当初チームメイトの自信過剰な若手ドライバーであるかつて一緒にレースを走ったルーベン・セルバンテス(ハビエル・バルデム)の誘いでソニーは復帰を果たすが © 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

かつて一緒にレースを走ったルーベン・セルバンテス(ハビエル・バルデム)の誘いでソニー・ヘイズ(ブラッド・ピット)は復帰を果たすが © 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
 

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ルーベンからロンドン行きのファーストクラスのチケットを渡されたソニーは、「エイペックスGP」の本拠地へと乗り込む。チームには自信家の新人ドライバーであるジョシュア・ピアス(ダムソン・イドリス)がいたが、ソニーは難なく彼と遜色のないタイムを叩き出す。

しかし型破りで自由奔放なソニーにチームのメンバーは戸惑い、同僚ドライバーのジョシュアも挑戦的な態度で接してくるのだった。シーズン9戦目のイギリスGPから30年ぶりに現役復帰を果たしたソニーは最後尾からスタートするが、経験に裏打ちされた常識破りの奇策を仕掛けていくのだった。

主人公のソニー・ヘイズ(ブラッド・ピット)は、当初チームメイトの自信過剰な若手ドライバーであるジョシュア・ピアス(ダムソン・イドリス)と衝突する © 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.主人公のソニー・ヘイズ(ブラッド・ピット)は、当初チームメイトの自信過剰な若手ドライバーであるジョシュア・ピアス(ダムソン・イドリス)と衝突する © 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

映画「F1®/エフワン」の映像はとにかくリアルで素晴らしい。なかでも現実の10チーム20台のマシンの最後尾に、11チーム目として「エイペックスGP」の2台が並ぶシーンは、作品への没入感をかなりアップグレードさせるものだ。

このシーンは実際に本番前のフォーメーションラップのときに撮影されている。関係者の多くが無理だろうと言うなかで、綿密に計画を練り、リハーサルも重ね、各チームとも話し合い、競技の公平性を損なわないということで実現したのだという。F1®主催者側の全面的協力があったからこそ撮影可能となった奇跡の場面だ。ちなみに観客はこのときこれが映画の演出だとは気づかなかったそうだ。

さらに驚かされるのは、時速300キロ超で走る本物のレーシングマシンを主演のブラッド・ピットが自分自身でドライブしていることだ。そのためコクピット(運転席)からの映像には特筆すべきものがある。

もともとレースが好きだったというブラッド・ピットは、即答でこの役を引き受けたが、撮影に臨むにあたっては、レーシングスキルの習得に加え、5Gにも及ぶ負荷に耐えるため、長期間の過酷な身体トレーニングにも取り組んだという。

また全編にわたってレースの撮影は実際のサーキットで敢行された。いずれも2023年シーズン後半の日程通りに劇中でも登場するが、前出のシルバーストンをはじめ、イタリアGPのモンツァ、オランダGPのザントフォールト、日本GPの鈴鹿、ベルギーGPのスパ・フランコルシャン、そしてラスベガス、アブダビなど世界各地がロケ地となっている。

F1®は現在、21カ国24のサーキットで開催されているが、この世界各地を横断しての撮影も、製作者側が「リアル」にこだわった結果だとも言える。映画を観る側としても、さながらレースを追いかけながらチームとともに旅をしている気分にもなる。

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文=稲垣伸寿

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