実際のレース期間中にも撮影
映画「F1®/エフワン」は、日本でも大ヒットを記録した「トップガン マーベリック」(2022年)と同じスタッフ陣によって企画された。監督はジョセフ・コシンスキー、製作にはジェリー・ブラッカイマー、脚本にはアーレン・クルーガーが名を連ねており、日本の配給会社も「地上版『トップガン』」として宣伝展開をしている。
過去にF1®を舞台とした映画は「グラン・プリ」(1966年)や「ラッシュ/プライドと友情」(2013年)など何作か製作されてきたが、映画「F1®/エフワン」の画期的なところは、この世界最高峰の自動車レースから全面的協力を得て製作されている点だ。そのため作品から放たれるリアル感は半端ない。
前出のNetflixの「Formula 1:栄光のグランプリ」と同様、この作品もF1®を運営するリバティメディアの世界拡大戦略と深く関係しているためか、映画の製作者側とは稀に見る緊密なコラボレーションが成立している。
その最たるものは、映画の撮影が実際のレース期間中にもされていることだ。例えば、主人公が最初にマシンを駆ってレースに出場するシーンは、2023年にシルバーストーンサーキットで開催されたイギリスGPで撮影されている。その際には、実際のF1®の有力チームであるフェラーリとメルセデスのガレージの間に、この映画のセットも組まれたという。主人公を演じたブラッド・ピットも次のように語る。
「F1®側はほんとうに協力的だった。信じられないくらい多くの扉を開いてくれた。レースウィークエンドに撮影させてもらい、表彰台でも、国歌演奏中でも撮影ができた。専用ガレージまで用意してもらい、レース中には(コース脇の)ピットウォールでも撮影した」
また物語に関しても、現実のF1®のシーズンのなかに見事なまでに嵌め込まれている。F1®の世界選手権は10チームで争われているのだが、そこに11チーム目として加わるかたちで物語が進行していくのだ。
そのため主人公とレースで争うドライバーたちはF1®で7度の年間チャンピオンに輝いたルイス・ハミルトンであったり、世界最速の男マックス・フェルスタッペンであったりする。
主人公を演じるブラッド・ピットとフェルスタッペンが並んで一緒のアングルに収まっている場面は、F1®ファンならずとも思わず唸る特別なシーンだ。まさに現実のなかに物語が放り込まれているという画期的な設定なのだ。そこから感じるリアルな空気感はこの作品ならではのオリジナリティかもしれない。
また、劇中ではF1®のドライバーや関係者たちがカメオ出演もしている。チャンピオン候補のランド・ノリスやオスカー・ピアストリ、シャルル・ルクレールや日本人ドライバーの角田裕毅なども顔を見せている。さらにメルセデスのチーム代表であるトト・ウォルフに至ってはセリフまで用意されていた。


