AI

2025.06.26 15:00

AIで「次世代の世界的ヒットアニメ」を育てる、米新興スタジオChronicleの挑戦

Shutterstock.com

Shutterstock.com

エンタメ業界の勢力地図が、生成AIとSNSの登場によって激変する中で、「次の世界的ヒット作品は、ハリウッドではなくYouTubeから生まれる」と予測するロサンゼルスの新興スタジオが、1200万ドル(約17億4000万円)を投じるプロジェクトを進めている。

ワーナー・ブラザースとドリームワークスのアニメ部門に勤務したクリス・デファリアと、AI関連の投資家であるアーロン・シストが今年初めに設立したChronicle(クロニクル)は、独自のAIツールを活用してIP(知的財産)を分析・育成し、ベンチャーキャピタルのような手法でコンテンツ開発を進めている。

「我々がやっている仕事は、制作スタジオというよりもベンチャーキャピタルに近い。この会社は、本物のフォロワーを持つ有望なインディーズのクリエイターに少額の出資を行い、反応があったものに本格的に投資する」とデファリアは語る。

Chronicleは、次世代の世界的大ヒットはSNSから生まれる、という見方に賭けている。彼らは、映画を作ってから観客を集めるという手法をとるのではなく、すでにネット上で反響を呼んでいる「ファンファースト」のコンテンツを見つけ出し、それをプレミアムなシリーズや映画に育てようとしている。デファリアによると、Chronicleは特にアニメーション作品に注力しており、その理由を彼は、「アニメはデジタルネイティブなメディアで、スケーラブルかつ幅広い層に響くからだ」と説明している。

同社はすでに6本のアニメプロジェクトをインキュベーション中で、最初の作品は今夏に公開予定という。また、これらのパイロット作品は、Chronicle内部のAIプラットフォームのテストに用いられる。シストによればこのプラットフォームは、作品のファンベース構築のための、「IP開発のラストワンマイルを自動化し、最適化するための配信インテリジェンスツール」という位置づけだ。

以前、エリック・シュミットのディープテックVCファーム「First Spark Ventures」に所属していたシストは、「クリエイターにとって最大の障壁は、自分の作品を見てもらい、ファンを獲得することだ」と語る。

「私たちのAIツールは、掲示板のReddit(レディット)の書き込みからYouTubeのサムネイル至るまで、あらゆる情報を分析してコンテンツの配信戦略を常に調整している。私たちは、映画を作るためにAIを使っているのではなく、人々がどうやってコンテンツを発見し、それに惹かれるようになるのかを解明するためにAIを使っている」と彼は説明した。

再生回数よりも大事な指標

Chronicleの1200万ドル(約17億4000万円)のシードラウンドは、Point72 VenturesとPatronが主導した。同社は、外部の独立系クリエイターを、インキュベーター兼アクセラレーターのような立場から支援している。これらのクリエイターの多くは、大手のスタジオに勤務しながら、夜間や週末に独自のコンテンツを制作する人々だという。彼らは、Chronicleからの開発資金によって、短編のプロトタイプを制作し、オンラインでの反応をテストする。そして反響があったプロジェクトに対しては、さらなる支援が行われる。

「我々が本当に重視する指標は、再生回数ではなくそのコンテンツを見た人々が感じる『所有感』だ」とデファリアは言う。「ファンたちが『このコンテンツは自分が発見したものだ』だと感じ、もっと観たいと思うことが重要だ。そのようなコンテンツこそが、TikTokからテレビへと運ばれることになる」と彼は語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事