これまでに45ヴィンテージしか造られず、各年の生産量も限定的なシャンパーニュ・サロンは、世界のワインラバーが追い求める、垂涎のワインだ。若いときは鋼のように頑な面もあるが、長期熟成を経ると花開いた姿を見せ、その長期熟成のポテンシャルからコレクターアイテムとしても人気が高い。
ワインに造詣が深い佐藤氏も、「サロンは最低でも20年は寝かせたい。熟成してから味わいたい極上のシャンパーニュ」と言う。
そんなサロンにとって、最大の市場は日本。これにはドゥポン社長がこれまで築いてきた関係と功績も大きい。同氏が初めて日本を訪れたのは1998年。直近では2024年に訪問し、それが74回目だったという。
「今では日本はシャンパーニュにとって第3位の市場ですが、当初は非常に小さかった。サロンも、少しずつ着実に成長していきました。良い時も難しい時もコミットし続けた結果だと思っています。また、サロンの成長には、輸入元やエージェントのサポートも大きかった。今では友人がたくさんいて、日本は第二の故郷だと感じています」
“自然が育む宝石”とともに
サロンの新しいヴィンテージ2015に合わせて、佐藤氏が提案した料理が「プティポワ・キャヴィアのタルト(Tarte aux petits pois caviar)」。フランス語でプティポワはグリーンピースであるが、佐藤氏はこう説明する。
「このプティポワ・キャヴィアはわずかな期間にしか味わえない、サロンと同様に希少で貴重な食材です。果実のような甘さと繊細さが特徴で、自然が育む宝石と言えます。タルトには、少量のライム汁をかけ、リベッシュという爽やかなハーブを添え、ピスタチオオイルを少し加えて深みを出します」

サロン2015にこの料理を提案した理由を聞くと、「開けたてのサロンの第一印象として、青々しいフレッシュさを感じました。さらに、シャルドネ特有の快活さとミネラル感が際立ち、このヴィンテージならではの熟した豊かな果実とのバランスも取れています。10年の熟成を経て、熟成由来の深みと濃密さはあるものの、驚くほど若々しく、まだ熟成の初期段階。このタルトのフルーティーな若々しさ、ピュアさは、サロン2015と調和し、繊細でエレガントな印象を与えます」と解説する。
その言葉どおり、口の中でワインと料理を合わせると、プティポワの優しい甘みが、ワインの果実やフレッシュさを引き立たせる。さらに、ライムのアクセントが、ワインの柑橘の要素と共鳴し余韻を引き延ばす。タルトの軽いサクサクとした触感とワインのクリスピーなテクスチャ、さらには、ワインの澱熟成から来るほんのりと香ばしいビスケットのようなニュアンスと重なり合っていた。
ドゥポン社長も、「完璧な組み合わせ。シェフの料理は、ユニークでクリエイティブだが、誇張しすぎておらず、サロンの繊細さとも好相性」と絶賛した。


