昨年末、ウーバーは人工知能(AI)分野向けのデータラベリング新事業を立ち上げた。この分野で台頭を狙う小規模な競合よりも優位に立てると考えているようだ。
配車サービス大手ウーバーのデータラベリング部門
メタが先週、データラベリング大手Scale AI(スケールAI)の株式49%を143億ドル(約2兆500億円。1ドル=145円換算)で取得したというニュースが関係者に衝撃を与えた。これを受けて、OpenAIはスケールAIとの取引を段階的に縮小し、関係を打ち切る方向だと報じられている。グーグルもまた、スケールAIとの提携解消を計画中で、複数のデータラベリングの競合がその空白を埋めようと活気づいている。
配車サービス大手ウーバーの、あまり知られていない事業部門もそのひとつだ。昨年11月、同社はデータラベリング部門「ウーバーAIソリューションズ」を立ち上げており、外部企業のAIモデルのトレーニングを支援している。スケールAIとメタの取引によって市場に新たな隙間が生まれたことで、ウーバーは新規顧客への売り込みを強化している。
「当社はこれまで常に、フレキシブルなオンデマンド労働のプラットフォームを中核に置いて事業を行ってきた」と、勤続10年のキャリアを持ち同部門を統括するメガ・イエサドカはフォーブスに語った。ウーバーは、請負業者であるドライバーの力を借り世界各国で乗客や荷物を運んでおり、同社プラットフォームは「現代のデジタルタスク事業にも非常によくマッチする」とイエサドカは述べている。
ウーバーは6月20日、AI関連サービスの拡大を図っていることをフォーブスに明らかにした。同社は、AIモデルの訓練を行う顧客向けに、音声・映像・画像・テキストを含む即時に利用可能なデータセットの提供を開始する。同社はまた、社内で使用しているデータラベリングプロジェクトの管理プラットフォームや契約クリックワーカーに対するアクセスを外部にライセンス提供し、クライアントが利用できるようにするという。
またクライアントに対しては、カスタマーサポートなど特定業務に使用するAIエージェントの開発支援ツールも提供を開始する。
なお同社は、部門立ち上げ当初は「ウーバー・スケールド・ソリューション」という名称を用いていたが、この「スケールド」の部分を「AI」に改めたことを明らかにした。この名称の変更は、似た名前の競合サービスとの混同を避けるためなどではなく、単に同部門のミッションを明確にするためという。
データラベリング業務の自動化で競合と差別化
ウーバーは今後、クリックワークプロジェクトの立ち上げプロセスを自動化することで、競合との差別化を図りたい考えだ。同社は現在、顧客が一般的な言葉で「どういったデータ処理を必要としているか」を記述するだけで開発が進められるインターフェースを開発中という。またこのプラットフォームは、入力内容にもとづいて自動的にクリックワーカーへのタスクの割り当て、ワークフローの構築、品質管理を行う仕組みだ。これにより、手動によるタスクを取り除き、人間のクリックワーカーに迅速に作業を割り当てられるという。



