ドルの他の主要通貨に対する価値は年初から今月中旬までに約10%下落し、現在、3年ぶりの低水準で取引されている。これは決して小さな下落ではない。米国の財政赤字の拡大と関税の絶え間ない変動に対する懸念から、ドルの価値は今後さらに低下する可能性がある。
スイス金融大手UBSは先週、顧客向けメモで、ドルは現在「魅力的ではない」として、米経済の減速に伴い、今後さらに下落が見込まれるとした。米ブルームバーグ通信によると、為替変動を回避するため、米国の輸入業者に対し、ユーロやペソ、人民元で決済するよう求める南米やアジアの企業もあるという。ドルが国際取引で疑いようのない基軸通貨だった第二次世界大戦後の時代が大きく変化しようとしている。
金がドルに次ぐ第2の準備資産に
ドル安の最大の恩恵を受けているものの1つが金(ゴールド)だ。ドル建てで価格設定された金は、ドルの価値と逆の動きを示す傾向がある。金価格は今年、1トロイオンス3400ドル(約49万3000円)を上回る水準で取引されており、ドルとの逆相関関係は明確に表れている。
この価格高騰にもかかわらず、世界中の中央銀行は金の蓄積を続けている。英ロンドンに本部を置く金の業界団体ワールドゴールドカウンシル(WGC)によれば、各国の中央銀行による金の購入量は過去3年間にわたり年間1000トンを超えている。これは過去10年間の年間平均の2倍以上に当たる。現在、機関投資家らが保有する金の量は、ブレトンウッズ体制下の1965年当時とほぼ同水準となっている。
欧州中央銀行(ECB)の最近の報告書によると、世界の公的準備資産に占める金の割合(20%)が史上初めてユーロ(16%)を上回った。これは、世界の中央銀行の95%が今後1年以内に金準備を増やす予定であることを示すWGCの最近の調査結果とも一致している。この割合はWGCの調査開始以来、最高値となる。



