南米チリのアンデス山中に建設されたベラ・C・ルービン天文台が23日、天文観測史上最大のデジタルカメラを備えた唯一無二の望遠鏡による初の観測画像とタイムラプス動画を公開した。今年後半から開始する10年間の観測ミッションでは、新たに1000万個の超新星、200億個の銀河、数百万個の小惑星と彗星を発見できると期待されている。
世界の天文学者らが稼働を心待ちにしていたルービン天文台のファーストライト(試験観測)画像コレクションとして公開されたのは、新天文台の誇る広大な視野、銀河の拡大画像の背景にひしめく無数の天体、数々のタイムラプス動画などだ。このうち三裂星雲と干潟星雲をとらえた1枚は、わずか7時間余りの観測で撮影した678枚の画像を合成して作成された。おとめ座星団の壮大なパノラマ画像もある。
2025年後半に開始を予定する大規模撮像探査プロジェクト「LSST(Legacy Survey of Space and Time、時空間レガシーサーベイ)」では、地球に衝突すれば都市1つを消し飛ばすとされる直径140m超級の危険な小惑星の9割を検出できるとみられている。また、恒星を周回せず単独で宇宙空間を漂う浮遊惑星(自由浮遊惑星)や、太陽系外からやってきた星間彗星(恒星間彗星)、超新星の検出にも期待がかかる。
口径8.4mのシモニー・サーベイ望遠鏡は、革新的な3枚鏡を用いた設計により、満月7個分の広視野を持つ。さらに、比類のないエタンデュ(分光器の明るさの尺度)を実現し、地球上のどの望遠鏡よりも優れた超広視野・大集光力を備えている。
また、望遠鏡の核となる世界最大のデジタルカメラ「LSSTカメラ」は、39秒ごとに高解像度画像を撮影し、一晩で約800枚の画像を生成し、3~4夜で南半球の全天をスキャンする。これにより科学者たちは、数カ月間や数日にわたる天文現象はもちろん、数秒間で消えてしまう現象の追跡さえも可能になる。
こうしてルービン天文台は、進化し続ける宇宙の10年間におよぶタイムラプス動画を作成する。これは「時間領域天文学」と呼ばれる分野に属する観測だ。生成されるデータ量は毎晩およそ20TB(テラバイト)に上り、LSSTの初年度だけで他のすべての天文台がこれまでに収集したデータ量の合計を上回ることになる。



