では、ロレックスの強さの秘密はどこにあるのだろうか?
まず第一に、同社は1960年以来、ハンス・ウィルスドルフ財団(ブランドの共同創業者の名にちなんで命名された家族信託)によって所有されている。そのため、他の高級ブランドとは異なり、同社が株式市場やアクティビストの動向に左右されることはない。ロレックスは、大規模な投資会社のポートフォリオの1つではないのだ。実際、ロレックスは非営利団体であり、その利益は芸術や社会・環境問題に関わるさまざまな慈善団体に寄付されている。
また、ロレックスの歴史に関する本を執筆したピエール=イヴ・ドンゼによれば、同社に成功をもたらした最も重要な要因は、1960年代に同社が自社製品を「特別な人のための特別な時計」と位置づける決断をしたことだという。ブルームバーグが昨年実施したインタビューでドンゼは、当時のスイス時計産業はまだ、職人技と品質だけを頼りにしたものだったと語っている。
「これは米国の広告代理店であるジェイ・ウォルター・トンプソンのアイデアでした。これによりロレックスは、個人の社会的達成や成功のシンボルとなったのです」とドンゼは語る。
こうしてロレックスは、ポール・ニューマンが大ヒット映画の中でオイスターモデルを着用し、何千人ものセレブリティが5万ドル(約720万ドル)以上もする最新モデルを着用する姿が目撃され、写真に撮られ、映画の中で着用するブランドとなったのだ。
また、ロレックスは最近、市場の「気まぐれ」から身を守るための手段を講じている。2023年、ロレックスは世界最大の時計販売店のひとつであるBucherer(ブヘラ)を買収した。
加えて、偽造品の急増に対処するため、ロレックスは昨年、「認定中古時計」を販売するプログラムを開始した。購入する時計が間違いなくロレックスであり、ロレックスによって修理されたものであるという安心感を顧客に与えることで、結果的にそのブランドを守るというこの取り組みは、急進的だが見事なものと評価された。
他の何百万人もの人々と同じように、私もキャリアの初期に初めてロレックスを買ったときの記憶を大切にしている。金属製のストラップはとてもよくデザインされていて、着けていることを忘れるほど手首にフィットしていた。それを身につけると自信を持て、見た目も美しかった。
ロレックスのストーリーは、ブランドをどのように築き上げ、どのように経営していくかを示す一例として、多くの人々にインスピレーションを与え続けている。


