4. イノベーション文化がグローバル化し、ボトムアップ型になり、社会に対して責任を持つようになる
革新を担うイノベーターたちは、かつてないほど「横のつながり」を深めている。
インターネットへのアクセスに関して根強い格差があるものの、全世界では推計55億6000万人が、何らかの形でインターネットを活用している。GitHub上では1億人以上の開発者が、オープンソースプロジェクトに関する共同作業を行なっている。Kaggle(カグル)などのプラットフォームによって、世界中のデータサイエンティストが手を組んで複雑な問題の解決に取り組めるようになった。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、リモート・コラボレーションツールの開発を加速した。メンバーが世界各国に散らばるようなチームは、例外的なものではなくもはや当たり前になっている。
こうした当事者同士の横のつながりがネットワーク効果を生み、さらにイノベーションを拡大している。スタンフォード大学の研究者が、画期的なAIに関する研究結果を発表すると、ほんの数時間で、インドのバンガロール、ドイツのベルリン、ブラジルのサンパウロの研究チームが、それを下敷きにした研究に着手できる。今や、人類の集団的知性が真の意味でネットワーク化されているのだ。
加えて、AIをはじめとするテクノロジーの急速な進歩は、人類にとって大きな倫理観のシフトを意味し、深刻な倫理的・社会的問題を突きつけている。
ルネサンス時代の思想家や科学者たちが、自らの発見が持つ意味に取り組んだのとまったく同様に、現代のリーダーたちは、技術の進展に伴う複雑な状況を乗り切るために、より大きなコラボレーションの必要性を痛感している。
創業者、投資家、プロダクトマネージャーと複数の肩書きを持ち、『Moonshot Moments(ムーンショットの瞬間/未邦訳)』という著書もあるミラン・コーデスタニは、こう主張する。「既存の枠組みに縛られない思考法や創造性を養うには、単なるチームワークや個人の意志以上のものが必要になる。新たなテクノロジーを開発し、それに伴って、『人間であるということの意味』を再解釈するなかで、我々は、複雑な道徳的基準や知的枠組みのあいだで折り合いをつけ、体系化する必要に直面するだろう」
こうしたコーデスタニの主張は、イノベーションに対して、思慮深く包摂的なアプローチをとる必要性を強調するものだ。これは、人類すべてに対して及ぼし得る影響を考慮するアプローチだ。


