米電気自動車(EV)大手テスラは6月22日、テキサス州オースティンで待望のロボタクシー(自動運転タクシー)サービスを開始した。これを受けて同社の株価は23日の史上で急騰し、すでに世界一の富豪であるイーロン・マスクの保有資産は、100億ドル(約1兆4600億円)以上も増加した。
テスラの株価は23日の市場で9%上昇し、終値は3週間ぶりの高値の349ドルを記録した。
テスラの発行済株式の13%を保有し、さらに追加の9%の持ち分を争っているマスクの保有資産は、この日だけで約150億ドル(約2兆1900億円)増加した。この伸びは、22日のフォーブスのリアルタイムランキング上のどの富豪よりも大きな資産の上昇額となった。マスクと世界2位の富豪のオラクル会長のラリー・エリソンとの保有資産の差は、これで1700億ドル(約24兆7700億円)以上に拡大した。
テスラは、22日にオースティン市内の制限されたエリア内でロボタクシーの試験走行を開始した。この立ち上げは限定的なもので、テスラのオペレーターが助手席に同乗する10〜20台のモデルYを走行させたのみだったが、投資家は好感した模様だ。
ウェブドッシュ証券のアナリストのダン・アイヴスが率いるチームは、22日の顧客向けメモで、テスラのロボタクシーが「我々の期待を上回った」と記した。テスラをカバーする主流の証券会社の中で最も強気な立場をとるウェブドッシュは、テスラの目標価格を500ドルに設定している。
テスラ株の上昇は、より広範な株式市場の上昇の一部でもあった。この日のS&P500とハイテク株が中心のナスダックは、いずれも約1%上昇し、中東における地政学的緊張への懸念を市場が振り払う形となった。
テスラの待望のロボタクシーの立ち上げは、依然として懐疑的な見方が残る内容となっている。今回の初期のテスト車両台数は、マスクが2026年までに目指す「数十万台」という目標からは程遠いもので、グーグル傘下のウェイモがオースティンで運行中の約100台を大幅に下回っている。さらに注目すべきは、今回投入されたロボタクシーが、昨年発表された専用設計の「サイバーキャブ」ではなく、量産車のモデルYである点だ。サイバーキャブは、今のところ発売時期が未定で、ウォール街の反応も冷ややかだった。
RBCキャピタルマーケッツのトム・ナラヤンは22日の顧客向けメモで、「投資家の反応は、おおむね中立的だ。この試みの是非は時間が経ってからでなければ分からない」と記した。
テスラの株価は、今月初めのマスクとトランプ大統領との激しい対立を受けて急落したが、ここ数日でそこから立ち直っている。同社株が6月5日に記録した47ドルの急落は、ファクトセットのデータによると同社史上で過去最大だった。



