UNDER 30

2025.06.25 11:30

「世界を変える30歳未満」アジアに選ばれた、AI分野の若手起業家たち━ 2025年版

「LinqAlpha」の共同創業者 ジン・キム(Douglas Levy for Forbes Asia)

「LinqAlpha」の共同創業者 ジン・キム(Douglas Levy for Forbes Asia)

アジアの若手起業家たちは、独自の人工知能(AI)モデルの開発や特定用途向けのサービスの構築を通じて、AI革命の最前線に立っている。

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昨年5月、韓国の起業家のジン・キム(28)はスビン・パン(32)やフォーブスの「30 UNDER 30」の受賞者であるチェ・ホジュン(31)およびチェ・チャンヨル(33)らとチームを組み、主にヘッジファンドの運用担当者向けのデータプラットフォーム「LinqAlpha(リンクアルファ)」を共同創業した。このサブスクリプション型のプラットフォームは、AIを活用して80以上の市場の20の言語にまたがる6万社超の企業調査を迅速に行うもので、有価証券報告書や財務報告書、PDFの資料、SNSの投稿などの膨大なデータを解析する。「私たちは、ヘッジファンドのアナリストの思考プロセスをアルゴリズムで再現している」とキムは語る。

フォーブスは、5月に発表した2025年版の「30 UNDER 30アジア」リストに、AI部門を新設した。キムはこの部門の選出者の一人であり、AIを用いてさまざまな業界で革新を起こしている起業家たちの一人だ。

ソウルを拠点とし、ニューヨークにもオフィスを構えているLinqAlphaは昨年、韓国のベンチャーキャピタル(VC)であるAtinumやInterVest、Kakao Ventures、Smilegate Investmentなどから660万ドル(約9億6000万円)のシード資金を調達した。カリフォルニア大学バークレー校で金融工学の修士号を取得したキムは以前、クオンツ取引のリサーチャーを務めていたが、現在はLinqAlphaで企業分析を担うAI開発チームを統括している。

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同社の顧客企業が運用している資産の総額は1000億ドル(約14兆5000億円)を超えるというが、AIを活用した金融リサーチは競争が激しい分野で、LinqAlphaの競合にはブルームバーグなどの大手が挙げられる。しかし、キムは同社が競合と比べてより多くの米国以外の企業を顧客としていることや、顧客ごとの投資戦略に応じたリサーチのカスタマイズが可能な点で、他社と差別化を果たしていると主張する。「私たちは、この分野の最先端にいる」と彼は述べている。

今年の「30 UNDER 30アジア」におけるもうひとつの野心的なAIスタートアップは、シンガポールに拠点を置くSapient Intelligence(サピエント・インテリジェンス)だ。2024年にワン・グアン(24)によって共同創業されたこの企業は、人間の知性を超える汎用人工知能(AGI)の開発を目指しており、数学や神経科学、機械学習の技術を組み合わせ、数独のような極めて複雑な問題を解くAIモデルの訓練を行っている。Sapient Intelligenceは昨年12月、Vertex Venturesや住友グループなどから2200万ドル(約3億2000万円)のシード資金を調達し、評価額は2億ドル(約290億円)を超えた。

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編集=上田裕資

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