キャリア・教育

2025.07.01 13:30

大阿闍梨が10代に伝えたい心構え「自己に打ち勝つ」「ねたみは贈り物」

塩沼亮潤|大阿闍梨、福聚山慈眼寺住職

塩沼亮潤|大阿闍梨、福聚山慈眼寺住職

2025年6月25日発売のForbes JAPAN8月号は「10代と問う『生きる』『働く』『学ぶ』」特集。創刊以来、初めて10代に向けた特集を企画した。背景にあるのは、10代をエンパワーメントしたいという思いと、次世代を担う10代とともに「未来社会」について問い直していくことの重要性だ。「トランプ2.0」時代へと移行した歴史的転換点でもある今、「私たちはどう生きるのか」「どのような経済社会をつくっていくのか」という問いについて、10代と新連結し、対話・議論しながら、「新しいビジョン」を立ち上げていければと考えている。

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特集では、ドワンゴ顧問の川上量生、 軽井沢風越学園理事長の本城慎之介、 神山まるごと高専理事長の寺田親弘による表紙座談会をはじめ、世界を変える30歳未満30人に注目した「30 UNDER 30」特集との連動企画「15歳のころ」には、ちゃんみな、Shigekix、ヘラルボニー松田崇弥、文登、Floraアンナ・クレシェンコといった過去受賞者が登場。そのほか、ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正、前台湾デジタル発展相大臣のオードリー・タンへの10代に向けたスペシャルインタビューも掲載している。

1300年の中でわずか2人しか成し遂げていない「大峯千日回峰行」を満行した塩沼亮潤。極めて過酷な修行を経験した彼が、今の10代に伝えたい人生のアドバイスとは。


起床するのは前夜の23時半。そこから滝行を行って身を整え、吉野山の金峯山寺から大峰山山頂へ。標高差1355m、往復48kmの山道を16時間かけて、ひたすら歩く。この修行を、雨の日も風の日も、1000日繰り返すのが「大峯千日回峰行」である。

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吉野の山道を歩けるのは初夏から夏の終わりまでの4カ月で、1000回歩き切るのに9年はかかる。修験道約1300年の歴史上、大峯千日回峰行を満行した者は2人しかいない。そのひとりが塩沼亮潤大阿闍梨だ。

苦難に対して瞬間的にパワーが出ることはあるだろう。ただ、それを1000回も持続させるのは常人にできることではない。9年とはいわないが、せめて部活や受験などの数年間、ひとつのことに打ち込んでモチベーションを維持することはできないか。そう問うと、塩沼大阿闍梨は「これまであまり明かしてこなかった」と、修行中にやっていた習慣について話してくれた。

「回峰行で山の中を行くとき、ハッと気づいたことがあるとメモを取り、お寺に戻った後に帳面に墨字で清書していました。実はそこに一緒に、自分に勝てた日は白丸、負けた日は黒丸をつけていた。一種のゲーム感覚ですね。白丸が並ぶとうれしくて、それが支えになりました」

白か黒かの基準は、自分を追い込めたかどうか。全力を出し切ったら勝ち、手を抜いた自覚があれば負けだ。内面の問題ゆえに自己判断するしかないが、結果は「999日目に振り返ったら、白丸が999個並んでいた」という。

「お相撲さんは本気で四股を踏むと10回で汗だくになります。しかし形だけ整えて50%くらいの力でこなすと、100回でも200回でも踏めるそうです。私は千日回峰行を“こなす”のは嫌でした。1日でも手を抜けば、もう後からその日は取り返せません。『あのときもう少し頑張っていれば』と後悔したくないという気持ちが強かったですね」

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インタビュー=村上 敬 写真=安島晋作

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