──あなたの著書のなかに「生命とPluralityは混沌の淵の狭い回廊に生まれる」という言葉があります。若い人たちは世界の秩序と混沌にいかに向き合うべきでしょうか。
オープンに活動することの重要性はすでにお話ししましたが、オープンに活動し、あなたのプロトタイプを共有することで人々を、私たちが呼ぶところの「プロトピア(Protopia)」もしくは「スルートピア(Through-topia)」に導くことができます。これは、完璧でつまらない“ユートピア”でも、不幸で抑圧的な“ディストピア”でもなく、「可能な世界」のプロトタイプです。そして、謙虚でいれば、人々があなたのプロトタイプを受け取り、異なる方向へ導き、うまくいくでしょう。もしそれをコントロールしようとすれば、混沌の淵ではなく、混沌からはるか遠い世界に生きることになる。あなたはほかの人の新しいアイデアに無関心で、「私のアイデアだけがアイデアだ」となり、非常に危険な立ち位置になります。他方でもしあなたが人の考えを気にしすぎると、何も生み出せません。ただ、他人に自身を適応させているだけでしょう。ふたつは両極端ですが、実はふたつとも無関心(Indifference)のケースです。前者は自分の立場を固持しすぎて無関心になり、新しいことに興味を示さなくなる、もうひとつは、(Indefferenceの)文字通り、他人との違いを消し去り、画一的な考え方にただ従うため、無関心になってしまう、というものです。ですから、Indifference(無関心)が我々の敵であり、Difference(相違)が友人です。相違を祝し、その相違を一緒にプロトタイプしましょう。

オードリー・タン(唐鳳)◎台湾の初代デジタル発展省大臣。幼少期から独学でプログラミングを学習。14歳で中学を自主退学し、19歳で起業家に。35歳史上最年少で行政院(内閣)に入閣。デジタル担当政務委員になり、分野を超えて行政や政治のデジタル化を主導。


