2025年6月25日発売のForbes JAPAN8月号は「10代と問う『生きる』『働く』『学ぶ』」特集。創刊以来、初めて10代に向けた特集を企画した。背景にあるのは、10代をエンパワーメントしたいという思いと、次世代を担う10代とともに「未来社会」について問い直していくことの重要性だ。「トランプ2.0」時代へと移行した歴史的転換点でもある今、「私たちはどう生きるのか」「どのような経済社会をつくっていくのか」という問いについて、10代と新連結し、対話・議論しながら、「新しいビジョン」を立ち上げていければと考えている。
特集では、ドワンゴ顧問の川上量生、 軽井沢風越学園理事長の本城慎之介、 神山まるごと高専理事長の寺田親弘による表紙座談会をはじめ、世界を変える30歳未満30人に注目した「30 UNDER 30」特集との連動企画「15歳のころ」には、ちゃんみな、Shigekix、ヘラルボニー松田崇弥、文登、Floraアンナ・クレシェンコといった過去受賞者が登場。そのほか、ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正、前台湾デジタル発展相大臣のオードリー・タンへの10代に向けたスペシャルインタビューも掲載している。
テクノロジーと民主主義への不信が渦巻く現代社会で新たな希望のイデオロギーを発信。台湾の天才オードリー・タンが語る、未来の可能性と10代へのメッセージ。
台湾の前デジタル発展省大臣で、2023年には米タイム誌の「世界のAI分野で最も影響力のある100人」にも選ばれたオードリー・タン。『PLURALITY』(※1)は過去5年間にわたり、彼女と経済学者でマイクロソフト首席研究員のE・グレン・ワイルが共同執筆した著作であり、イデオロギーだ。日本語では多元性や複数性という意味だが、台湾華語「數位(シュウェイ)」はデジタルといった意味でも使われる。世界で巻き起こる分断や専制主義への解決策としての、民主主義とテクノロジーの共生関係を表す言葉であり、それを推進する活動である。Forbes JAPANでは、5月初旬に来日したオードリー・タンに、これからの世界で人はいかに学び、働き、生きるのか、話を聞いた。
Plurality (※1)オードリー・タンは、現在のテクノロジーを巡る主な議論、一部の専門家や技術者が社会の主要な領域を支配し、意思決定を行う「テクノクラシー」、暗号とネットワークプロトコルが人間をまとめる組織や政治にとって代わる「リバタリアニズム」に対し、ITの力によって異なる背景の多様な人々が深く協働できる「デジタル民主主義」を提唱。全容は『PLURALITY―対立を創造に変える、協働テクノロジーと民主主義の未来』(山形浩生訳、サイボウズ式ブックス)に詳しい。オープンソースのフリーオンライン版(https://www.plurality.net)がある。
──台湾では、2019年に基礎教育カリキュラムが改訂されたそうですね。
はい、共創を生み出すための新しい教育モデルで、リテラシー(識字)からコンピテンシー(能力)カリキュラムへの移行です。リテラシーは、情報を消費すること、コンピテンシーは情報をつくることを意味します。単に新聞や雑誌を読む代わりに、すべての人々、小中学生といった若い人たちにも情報のつくり手、つまりジャーナリストや編集者になってもらうためのカリキュラムです。若い人たちに、偏向や怒り、憎しみに対する耐性をもってもらうことがジャーナリズムの機能ではありません。ジャーナリストのように考え、一緒に情報を発信することが、若い心をそのような害から守るのです。ICCS(国際市民性教育調査)は、2022年に台湾の中学生を、市民知識と社会をより良く変える能力において、世界のトップにランクしました。
社会のためにアジェンダを設定できるようになって初めて──学校のような小さな社会から国のような大きな社会まで──自分が市民であると感じられます。そうでなければあなたはただの消費者であり、臣民であり、市民ではありません。
Plurality (※1)オードリー・タンは、現在のテクノロジーを巡る主な議論、一部の専門家や技術者が社会の主要な領域を支配し、意思決定を行う「テクノクラシー」、暗号とネットワークプロトコルが人間をまとめる組織や政治にとって代わる「リバタリアニズム」に対し、ITの力によって異なる背景の多様な人々が深く協働できる「デジタル民主主義」を提唱。全容は『PLURALITY―対立を創造に変える、協働テクノロジーと民主主義の未来』(山形浩生訳、サイボウズ式ブックス)に詳しい。オープンソースのフリーオンライン版(https://www.plurality.net)がある。



