経済・社会

2025.06.24 10:15

建築家が挑む森林資産化のエコシステム

佐野文彦氏

「テクノロジーと仕組み」で文化と山を守る──建築家が日本IBMと挑む森林資産化の新構想

森林資源を次世代へと継承していくには、経済合理性に耐えうるビジネススキームが不可欠である━━そう頭では理解していても、実際に仕組みを構築するには大きな壁があったと、佐野氏は振り返る。

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「建築家として、木材の現場や文化的価値についての実感はあります。でも、それをどう事業として成立させていくか、金融的な視点やスキームの作り方が自分には足りなかった。投資家やVC、銀行、あるいは個人投資家と、どんな関係性を築いていくべきなのか、持続可能な形で回るモデルにするにはどうすればいいのか。その部分が手探りだったんです」

そんなときに出会ったのが、日本IBMが主催するスタートアップ支援プログラム「IBM BlueHub プログラム in Kyoto」だった。テクノロジー活用と事業共創を軸とする同プログラムでは、IBMのコンサルタントやエンジニアが伴走しながら、実社会で機能するプロダクトやサービスの構築を支援している。

「『森林の資産化』というテーマは、まさに新しい座組が必要な領域。だからこそ、事業構築のプロと一緒に考えていけるこのプログラムに魅力を感じました。ビジネスに不慣れな建築家だからこそ、実現に向けた協働の仕組みが必要だと思ったんです」

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さらに、拠点として「京都」を選んだことにも明確な理由がある。奈良で生まれ、京都で学び、数寄屋大工として修行を積んだ工務店も京都である佐野氏にとって、京都は“第二の故郷”とも言える場所だ。

「町家や旅館、料亭など、木材を使う文化がいまも日常に根付いている。京都は山に囲まれた都市であり、林業自体が景観や文化を守る営みとして根付いていると思うんです。だから、ここで森林と経済を結ぶ新しい仕組みを立ち上げる意義は大きいと感じました。ただの収益化ではなく、文化的価値を含めて語れる場所として、京都はふさわしいと思ったんです」

奈良県 吉野の森林
奈良県 吉野の森林
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文=西村真里子

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