マグロの漁師と職人に見る、木材価値の「目利き」の断絶
佐野氏が特に問題視するのは、山で木を育てる人々と、それを最終製品として活用する側との間にある「目利きの断絶」だ。
「ある日、林業に関わる方々と一緒に市場に行って、カウンターになるような大きなヒノキの板が並んでいるのを見ながら話していたんです。その時に、この木目は多分天然ですね、とか、ここもう節が出そうですね、みたいな話を木を見ながら話をしていたんですけど、「へえ〜そんなのわかるんですね」という感じであまり材としての話はできなかったんです。
木材の買い付けが原木で行われるというのは、いわばマグロの一本買いに似ています。そこから必要な部分を見極め、適材を選び出す工程が求められます。
たとえば、マグロも漁師→魚屋→寿司職人と手が渡る中で、目利きと技術によって価値が引き出され、最終的に最高の一貫へと昇華されていきます。漁師が魚の味を引き出すプロではなく、魚屋が寿司職人のようにその魅力を最大化できるわけでもない。むしろ、専門ごとのバトンリレーによって価値が育まれるのです。
木材もまた、本来持っている美しさや力強さが、きちんと評価・活用されるためには、このような「価値の継承と深化」のプロセスが必要ではないでしょうか。今の流通には、そのバトンが途切れてしまっているところがあるのではないか、木の本当の価値が正しく伝わっていないのではないか、と危惧しています」
佐野氏は、木材における目利きの断絶を橋渡しする役割を、自身が担えるのではないかと考えている。数寄屋大工、建築家、そしてアーティストとして、木材を空間に変換してきた経験を持つ彼だからこそ、見えているものがある。
「私には職人として木を見て加工し、使う経験と、デザイナー/建築家として選んだ木に形や機能を与えて価値を産んできた経験があります。木によって作られたものを欲している人々と、それを育む森をつなぐことができるのではないか。長い時間をかけて、何代にもわたって育てていくだけの価値を持った木や山の、その価値を大きく引き出すことができるのではないか、と考えています」



