英オリンピア展示場、世界的アート&イベントの「体験地区」として再生へ

ロンドン西部にある展示場、「オリンピア・ロンドン」(Shutterstock.com)

ロンドン西部にある展示場、「オリンピア・ロンドン」(Shutterstock.com)

AIはクリエイティブ産業を混乱させている。それどころか、破壊している。毎日のようにそうした話が聞こえてくる中でも、人間の創造力を固く信じ、それを擁護する人たちがいる。その1人が、ロンドン西部にある展示場、「オリンピア・ロンドン」の改修事業を手掛ける英Yoo Capital(ユー・キャピタル)の共同創業者、ロイド・リーだ。

1886年に開業したオリンピアは、ロンドンのランドマークのひとつ。数多くの歴史的な創造の瞬間を目撃してきた。1967年のクリスマスには、ジミ・ヘンドリックスやピンク・フロイドが出演した夜通しのパーティーを開催。1981年には、ヴィヴィアン・ウエストウッドが行った初のランウェイショーの舞台となった。

オリンピアのホール 1900年撮影(Photo by Keystone-France/Gamma-Keystone via Getty Images)
オリンピアのホール 1900年撮影(Photo by Keystone-France/Gamma-Keystone via Getty Images)

そのオリンピアは現在、2025年末までに「世界トップレベルの芸術、イベント、エンターテイメント、体験のための地区」となることを目指し、およそ13億ポンド(約2550億円)をかけた改修事業を進めている。完成すれば、過去50年近くの間にロンドンで建設された複合施設の中で、最大の規模となる。

リーはオリンピアについて、「そのDNAの中核をなすのは、ショーケース(展示)であり、今後もこれまでと同様、才能、文化、エンターテインメント、イノベーション、テクノロジー、その他あらゆるものを紹介するためのグローバルな展示施設であり続ける」と述べている。また、「国際的な展示施設の定義を変えるのは現在も未来も、この施設である」との見方も示している。

新たなオリンピアの設計を担当しているのは、英国の大手建築事務所、Heatherwick Studio(ヘザウィック・スタジオ)とSPPAR。どちらも世界各地で数々のプロジェクトを手掛けており、ヘザウィックはグーグル英国法人が建設中の本社ビル、SPPARはロンドンのショッピングモール「Borough Yards(バラ・ヤーズ)」などの設計も請け負っている。

英経済に多大な貢献

英コンサルティング会社Volterra(ヴォルテッラ)が公表した社会経済に関する最新のレポートによると、オリンピアがもたらす粗付加価値(GVA)は、年間6億ポンド(約1170億円)以上と見込まれており、新設される約4000人収容のコンサートホールや劇場だけでも、ロンドンの文化産業に年間およそ1800万ポンド(約35億円)をもたらすと予想されている。

また、ロンドンを訪れる旅行客はこの改修事業によって年間1000万人ほど増加するとみられており、そうした旅行客のうち、外国人の15%は国内の他の地域も訪れることから、英経済には6億4000万ポンド(約1250億円)以上がもたらされことになると推定されている。

オリンピア・ロンドンの未来

この歴史的な文化施設は今後、どのようなものになっていくのだろうか?改修事業を主導するリーに、話を聞いた。

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編集=木内涼子

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