多くの企業にとって、かつてはグーグルの検索サービスこそが、自社の存在を顧客に知らせる最良のツールだった。企業はSEO(検索エンジン最適化)と呼ばれる手法を駆使して、検索結果の上位に表示されるよう努めてきた。
AIの台頭と検索行動の変化
しかし、人工知能(AI)の登場によってその時代は終わりを迎えようとしている。例えば、旅行サイトのカヤックやオンライン学習サービスChegg(チェッグ)といった企業では、検索サイトからのトラフィックの流入はここ最近減少している。この背景のひとつには、検索を行った顧客の6割がそのリンクをクリックせず、AIが生成した要約を読むのみに留まっていたという2025年2月の調査結果が挙げられる。
またあるセキュリティ企業の幹部は、自社サイトへの検索トラフィックが今年10%減少したとフォーブスに語った。「従来のSEOはもう通用しない」とこの企業の担当者は述べた。
AI検索への適応という新たなニーズに応えるスタートアップ
今では、企業はグーグルの「AIによる概要(AI Overview)」、ChatGPT、Perplexity(パープレキシティ)といったAI検索エンジンで自社ブランドがどのように表示されるのかを理解しようと努め、AIに拾われやすいコンテンツの作成に乗り出している。また、こうしたニーズに応える新たなスタートアップも続々と誕生している。
「巨大な変化の波が押し寄せている」と語るのは、Profound(プロファウンド)共同創業者兼CEOのジェームズ・キャドウォラダーだ。スタートアップの同社は、AIによる回答において特定のブランドがどのように表示されるのかを可視化するサービスを提供しており、その顧客は米国の銀行USバンク、電子署名のドキュサイン、求人サイトのインディードなど100社以上に上る。
「我々は今、重大な岐路に差しかかっている。人間はもはやウェブサイトを訪れる必要がない。AIがユーザーとの関係性を完全に乗っ取ろうとしている」とキャドウォラダーは明かした。
「これは企業にとって一刻を争う」緊急の課題だと話すのは、クライナー・パーキンスのパートナーのイリヤ・フッシュマンだ。同社は、設立1年に満たないProfoundの2000万ドル(約29億2000万円。1ドル=146円換算)の資金調達を主導した。このラウンドには、エヌビディアやコースラ・ベンチャーズも参加し、Profoundの評価額は1億ドル(約146億円)を超えた。
Profoundが採用する戦略
この分野の課題に対応するため、Profoundは「安いサッカー用スパイク」や「ティーンに最適なスマホ」といった数千種類に及ぶプロンプトを生成して、それらをAI検索エンジンに投げて、各分野の回答で頻繁に登場するブランドを特定している。また同社ソフトウェアを顧客のウェブサイトに接続することで、どのページがAIによって最も多くクロールされているかをリアルタイムで監視している。
Profoundはさらに、AI検索におけるブランド評価を把握するために、「否定的なニュアンスを含む表現」も収集して「センチメント(感情)」を追跡する。同社は、従来のマーケティング代理店同様に、こうしたデータに基づきキーワード、フォーマット、レイアウト、メタデータの追加など、AI検索エンジンにクロールされやすいページ作りの提案を行う。
顧客の要望によっては、AIモデルを用いて、AI検索エンジンに拾われることを前提としたコンテンツも生成するという。



