GEOという新たな分野とその課題
まだ黎明期にあるこの新たな業界は、GEO(生成エンジン最適化。Generative Engine Optimization)と呼ばれている。
検索トラフィックが10%落ち込んだあるセキュリティ企業に対しては、Profoundは、競合他社がAI検索でどのように評価されているのかを可視化し、その対抗のため新たなコンテンツの作成を支援している。また、ある大手求人企業のSEO担当者はフォーブスに、数カ月前まで自社コンテンツがAI検索でどう表示されているかが把握できていなかったため、Profoundを導入したと語っている。
「我々は真っ暗闇の中にいた」と語るこの担当者は、現在はProfoundを使って、人気のあるプロンプトや、自社のブログやデータがAIの回答の中でどう扱われているかを分析しているという。ChatGPTといったツールから同社サイトへのトラフィックは全体の1%にも満たないが、AIがブランドについてどう語るかをコントロールすることが、今後の主戦場になると彼は考えているという。
しかし、AI検索エンジンの回答に影響を与えるのは簡単ではない。基盤となるモデルは常に変化しており、それに応じてAIの回答内容も変わる。AI検索エンジンは、同じ質問であっても、プロンプトの形式やタイミング、誰が入力したかによって異なる答えを返すのだ。「だからこそ、ChatGPTのようなツールがどのように情報を人間に提示しているのかを、明確にして伝えることに大きな価値がある」と語るのは、Profoundに出資したコースラ・ベンチャーズのパートナーのキース・ラボワだ。「自分たちが務める企業の利益のために、従業員個人や一般的な社内チームで同じことを実行するのは事実上不可能だ」。
AI上でのブランド表示状況を追跡するBluefish AI
この分野で活躍しているのはProfoundだけでなく、競合プレイヤーが鎬を削っている。ニューヨーク拠点のBluefish AI(ブルーフィッシュAI)は、旅行や製薬・小売業界の企業に向けて、Gemini、Perplexity、ChatGPTといったAI上でのブランド表示状況を追跡するサービスを提供している。同社は、クレーン・ベンチャーズやラコニアといった投資家から500万ドル(約7億3000万円)のシード資金を調達した。
アマゾンやメタ、マイクロソフトをはじめハイテク大手がAI企業に変貌し、彼らのAIツールやサービスが何億人ものユーザーを集めるようになったことが、マーケティング業界に「目を覚まさせる警告」を与えたと、Bluefishのアレックス・シャーマンCEOは指摘した。
AIの回答に影響を与える情報源
現在のウェブサイトは人間の読者を前提に設計されているが、AIの回答に取り上げられ顧客に直接届くようにしたい企業は、大規模言語モデル(LLM)にクロールされやすいようサイトを最適化する必要がある。OpenAI共同創業者のアンドレイ・カルパシーは3月のX(旧ツイッター)の投稿で、「人々が注目する情報や価値の99.9%は、これから大規模言語モデル(LLM)によって決まるようになる」と述べていた。
BluefishはAIの回答全体を俯瞰することで、どの情報源がブランドの印象に影響を与えているかを把握できるという。「当社が顧客に提供している分析の中では、AIによる回答に最も強く影響を与えている外部情報源のいくつかは、ユーザー投稿型情報サイトReddit(レディット)のようなプラットフォームだ」と同社創業者のシャーマンは述べた。
Athenaは、情報源、言及回数、参照率といったAI指標のダッシュボードを提供
この分野のもう1社のプレイヤーがAthena(アテナ)で、共同創業者のアンドリュー・ヤンは、以前グーグルのDeepMindの生成メディアチームに所属していた人物だ。Athenaでは数百万件のプロンプトやデータポイントを基に訓練した独自のAI検索モデルを活用し、情報源、言及回数、参照率といったAI指標のダッシュボードを提供している。ヤンによると、グーグル検索では上位の3リンクが全体の閲覧の大半を占める傾向があったが、AI検索はグーグルよりも幅広い情報源を参照するためマーケティングの射程を広げたそうだ。
消費者がAIの回答のみを見て意思決定し、クリックしない未来
ProfoundのキャドウォラダーCEOは、AI検索エンジンが人々にとって新たな、そしてより良い商品やサービスを発見するツールになると楽観的に捉えている。AIシステムがユーザーの代わりにネットを巡回し、数百のウェブサイトからデータをスクレイピング(取得)し、AI生成の回答を提供するにつれて、企業は「AIボットという新たなVIP顧客」の注目を集める必要性に気づき始めていると彼は語る。
「いずれ、我々は『ゼロクリック時代』に突入するだろう。消費者はAIエンジンの回答のみを見て意思決定し、ウェブサイトを訪れるのはAIエージェント(ボット)だけになる。それは良いことなのだと我々は信じている」と彼は語った。


