カナダに住む医大の卒業生ハシバ・カリミは、数週間後には米国ペンシルベニア州の病院で働いているはずだった。彼女は、今夏からペンシルベニア州で初年度のレジデンシー(研修医プログラム)を始める予定だった、外国生まれの海外医大卒業生144人のひとりだ。彼女のような存在は、米国の深刻な医師不足問題に対する、解決策の一端を担っている。
しかし、彼女が米国に入国できるのは、当分先のことになりそうだ。なぜなら、カナダ在住でトルコで医学教育を受けたカリミは、アフガニスタン生まれだからだ。彼女のH-1Bビザの面接は6月9日に予定されていたが、その日は、19カ国からの入国を禁止する、トランプ大統領が署名した大統領令が発効した日でもあった。
この大統領令には一部の例外が設けられていたが、医師に対する例外は明記されていない。カリミは、長年の努力を重ねて米国での機会を勝ち取ったのだが、今はただ待つことしかできない。
米国の医療現場に不可欠な存在
「米国における小児科研修医の4人にひとりは、海外医大の卒業生だ。そして彼らは、米国人の卒業生が応募すらしない、最も医師が不足している地域のポジションを埋めている」と、ニューヨークのブルックデール大学病院医療センターの研修医で、海外医科大学卒業生の擁護者でもあるセバスチャン・アルアラナは語る。「この問題が解決されなければ、誰が私たちの子どもたちの面倒を見るのか?」。
毎年夏になると、外国生まれの医師の卵たち数千名が米国の病院のレジデンシーに参加する。米国の病院と医学生や研修医を結びつける全米研修医マッチングプログラム(NRMP)のデータによれば、今年3月には、海外医大の出身者で外国籍を持つ6653人が米国の病院のインターンシップに内定していた。さらに300人が、3月のマッチで埋まらなかったポジションにその後マッチした。外国人が米国で医師として働くにはレジデンシーの修了が必須であり、これらプログラムは医師の供給において極めて重要だ。
二重の障壁となる入国禁止令
トランプ政権は、アフガニスタンやイランを含む12カ国からの個人の入国を禁止し、アジアやアフリカ、中南米の7カ国からの入国に制限を加えた。この措置は、米国に渡航する医師研修生の大半が使用するJ-1ビザの面接予約停止と並ぶ、新たな障壁となっている(この面接予約の停止は、国務省が申請者のSNS審査方針を策定するための措置だった)。
この国別の入国制限が研修生にどれほどの影響を及ぼすのか、現時点では明確になっていない。「私たちは、対象13カ国に居住している、もしくは関係を持つIMG(海外医科大学の卒業生)からの少数の報告を確認したが、彼らの一部はすでに米国に滞在している可能性もあり、来月からレジデンシーに参加できるかどうかの判断が難しい状況だ」と、NRMPのドナ・ラムCEOは語る。
すでに米国にいる対象国出身の研修医は滞在を続けられるが、出国した後に再入国できなくなる可能性がある。レジデンシーの期間は、専門分野に応じて3〜7年となっている。



