現地時間(CST)の6月19日23時1分、スペースXの超大型宇宙輸送機「スターシップ」が地上でのエンジン燃焼試験中に爆発炎上した。事故が発生したのはテキサス州にあるスペースXの開発拠点「スターベース」。その凄まじい爆発の瞬間はNASA Space Flightなどによってライブ配信された。スペースXによると全スタッフの無事が確認され、周辺住民への危険もないという。
事故原因の詳細は現時点では未公表だが、イーロン・マスク氏は事故から数時間後、次のようにポストした。
「ペイロード・ベイ内に設置された窒素COPVに不具合が生じたようだ、ただし、(その内部圧力は)保証圧力以下だった」
Preliminary data suggests that a nitrogen COPV in the payload bay failed below its proof pressure.
If further investigation confirms that this is what happened, it is the first time ever for this design.— Elon Musk (@elonmusk) June 19, 2025
爆発の瞬間、スターシップに何が起こったのか? マスク氏のコメントとスターシップの構造からその原因を推察してみたい。
「静的燃焼試験」での大爆発
スターシップは上段の「スターシップ」と下段の「スーパーヘビー」から構成される。上下段の総称も「スターシップ」とされるが、この記事では主に上段を指すこととしたい。
スターシップはロケットの第2段であると同時に宇宙船としての機能も備え、100~150トンのペイロード(荷物)を搭載することができる。その全長は50.3m。下段のスーパーヘビーを統合した状態では全長121m(現V2仕様)となる。
6月30日(日本時間、以下同)には通算10回目の飛行テストが行われる予定だったが、事故発生時にはその予備試験としてスターシップ単体でのエンジン動作テストが行われていた。この試験は「静的燃焼試験」、または「スタティック・ファイア・テスト」と呼ばれている。
この試験では、推進剤をタンクに充填し、機体を試験台に固定したままの状態でエンジンを点火する。推進剤とは燃料とそれを燃やすための酸化剤の総称だが、スターシップの場合は燃料に液化メタン、酸化剤として液体酸素を使用している。この試験によってエンジンの燃焼や推力、燃料系の流れ、その他システムの動作などが確認されるが、6月19日に行われた試験では推進剤を充填している最中、突然スターシップは爆発した。
爆発の原因は「窒素COPV」
Ship 36 experiences a RUD at Massey's during testing prior to Starship Flight 10. Seen in slow motion.
— D Wise (@dwisecinema) June 19, 2025
Continue to watch live: https://t.co/wL0tTdxtla
📸: @NASASpaceflight pic.twitter.com/sSy72p79fM
NASA Space Flightが公開した動画を見ると、スターシップの上部からガスが噴出し、そこから崩壊したことがわかる。マスク氏がポストした「ペイロード・ベイ」とはこの部分を指す。また、マスク氏の「窒素COPVに不具合が生じたようだ」とのコメントは、テレメトリ(遠隔)データから確認されたもののようだ。



