宇宙

2025.06.23 14:00

スペースXの超大宇宙機スターシップが爆発した原因、月と火星が「さらに遠く」なる可能性

(C)NASA Space Flight(YouTubeのスクリーンショット)

また、一般的なロケットではスラスター(姿勢制御装置)にも窒素やヘリウムが使用されるが、スターシップの場合は液化メタンや液体酸素を燃焼させずにそのまま機外に噴出することで姿勢制御を行っている。ヘッダータンクの加圧に窒素が使用されることはインタビューなどから確認できるが、メインタンクにも使用されているかはわからない。ただし、軌道上でエンジン停止時にもスラスターを作動させるには、すべてのタンクを常に加圧しておく必要があることから、おそらくメインの加圧にも窒素は使用されていると思われる。

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ヘッダータンクの推進剤に着火

IFT9のスターシップの内部画像。画面左手に黒い窒素COPVが複数本並んでいる。その間にはヘッダータンクから延びる推進剤のチューブ2本が見える(C)SpaceX/Yoshio Suzuki
IFT9のスターシップの内部画像。画面左手に黒い窒素COPVが複数本並んでいる。その間にはヘッダータンクから延びる推進剤のチューブ2本が見える(C)SpaceX/Yoshio Suzuki

こうした構造を持つスターシップで何が起こったのか? 爆発に至るシーケンスを考えると、以下のように予想される。

ペイロード・ベイ内の窒素COPVのひとつが破裂したことで、機体外壁が破断されて窒素ガスが噴出。同時にその破裂が、すぐ脇に延びるヘッダータンクの移送チューブも破壊。それによって液化メタンと液体酸素も噴出して気化し、混合されたそのガスに引火したことで機体上部が爆発。その衝撃が機体下部のタンクも破壊し、2度目の大きな爆発に至った……。ただし、これはあくまで推察なため、詳細は今後の事故報告を待つ必要がある。

テキサス州ボカチカにあるスターベースのサイトマップ。画面を左右に横切るリオ・グランデ川が米国とメキシコの国境。事故現場であるマッセイはその国境線に隣接している(C)Google/Yoshio Suzuki
テキサス州ボカチカにあるスターベースのサイトマップ。画面を左右に横切るリオ・グランデ川が米国とメキシコの国境。事故現場であるマッセイはその国境線に隣接している(C)Google/Yoshio Suzuki

この爆発によって地上施設も大きなダメージを受けた。スペースXの拠点であるスターベースは、機体組立棟やヘッドクオーターがある「ビルドサイド」、射場の「ローンチサイト」、試験台のある「テストサイト」の3つで構成されるが、今回の事故は「マッセイ」と呼ばれるテストサイトで発生した。マッセイはビルドサイドから直線距離で7.3km離れているが、爆発が起こった際にはビルサイドにも強い衝撃波が届いたはずだ。

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9回目の飛行テストに向けてマッセイで行われたスターシップの静的燃焼試験の様子。5月14日撮影(C)SpaceX
9回目の飛行テストに向けてマッセイで行われたスターシップの静的燃焼試験の様子。5月14日撮影(C)SpaceX

マッセイの敷地内には液化メタン、液体酸素、液体窒素などのタンクファームが並ぶが、それらも甚大な損傷を受けている。あらゆる作業を短期間で完了するスペースXといえども、その改修には数カ月を要するのではないだろうか。

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編集=安井克至

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