経済

2025.06.23 08:00

米イラン空爆、「経済には悪影響」しかない 厳しい夏に備えよ

イランの首都テヘランの革命広場に集まり、米軍による核施設3カ所への攻撃に抗議する人々。2025年6月22日撮影(Fatemeh Bahrami/Anadolu via Getty Images)

イランのドローンやミサイル、高速船による攻撃は、間違いなく湾岸地域の海運に大混乱を引き起こす。少しでも攻撃が成功すれば、情勢が安定するまで海運会社が湾岸地域を避けるため、原油価格は急騰して1バレル=100ドルを超えてくるだろう。

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米海軍は報復し、イラン海軍に大きな損害を与えるだろうが、湾岸の海運の安全を完全に保障するのは難しい。ミサイル発射基地を爆撃すればミサイル攻撃を減らすことはできるが、ドローンの大群がもたらす脅威は消えない。そのような状況が続けば、湾岸への入港を嫌がる荷主が相次ぐはずだ。最終的に攻撃の回数が減れば、船賃の引き上げと引き換えにリスクを取る荷主も出てくるだろうが、数週間、おそらく数カ月間にわたって原油の供給が途絶え、価格が上昇することは避けられまい。

イランの指導者たちが取れる道は3つある。交渉の継続を試みるか、おそらく数回の示威攻撃を行った後で大幅な譲歩を示して戦闘の鎮静化を図るか、またはトランプやネタニヤフとの交渉は実を結ばないと判断して軍事的報復に徹するかだ。これまでのイランとイスラエルのミサイルやドローンの応酬では、イラン側は緊張緩和を望んでいるように見受けられた。だが、今となってはそれも無駄だと感じているかもしれない。

その場合、海運・石油供給一般に対する脅威は長期化する。長い目で見れば(数カ月という意味だが)市場における供給減は最小限に抑えられるかもしれないが、不確実性によって石油の安全保障プレミアムは上昇し続けることになる。

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海運を標的とした大規模な攻撃がなければ原油価格は1バレル=100ドルに達しない可能性があるが、それでもタンカーへの脅威をめぐる不確実性と新たな情勢悪化への懸念が相まって、原油価格は長期にわたり90ドル台で推移するだろう。これは経済成長率を最大0.5%減少させ、インフレ率を同程度上昇させる。この状況が続けば、米連邦準備制度理事会(FRB)は金利引き上げに動かざるを得なくなる。

湾岸地域の石油施設への攻撃やホルムズ海峡の封鎖といった悪夢のシナリオが現実のものとなるか否かは、イラン政権がもはや大規模な戦闘激化しか選択肢はないと判断するほどの脅威を感じ取っているかどうかにかかっている。石油輸出国機構(OPEC)加盟国の余剰生産能力と世界の戦略的在庫を考えれば、1970年代のような石油危機と景気後退は避けられるはずだが、混乱と不確実性が経済に良い結果をもたらすことは決してない。厳しい夏となることが予想される。

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forbes.com原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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