かつて半導体業界で圧倒的だったインテルの地位は、いまや警鐘を鳴らす事例となっている。現在の状況は、同社が分割あるいは買収の標的となり得る脆弱性を抱えていることを示しているのではないだろうか。
凋落した王者の現状
AMDとエヌビディアが市場シェア、注目度、そしてAI成長ストーリーを手中に収めて疾走する一方、インテルは停滞した。次世代チップの投入、ファウンドリー事業の活用、アーキテクチャ上の優位維持に失敗し、重要なほぼすべての業績指標で後れを取っている。
以前フォーブスで指摘したとおり、この凋落は単なるタイミングの悪さではない。文化的惰性、誤ったリーダーシップ選択、そして先見性の欠如が、インテルを業界の先導的企業から肥大化し受動的な巨人へと変貌させた。現経営陣は変革を声高に唱えるが、攻勢の回復を示す確たる証拠は見当たらない。
結果として株価は見かけ上割安に映り、待ち続ける投資家には高くつく。インテルには価値ある資産が存在するものの、それを解き放つ戦略が混乱しているか、まったく欠けている。
王冠の宝石──ファウンドリー事業
インテルのファウンドリー構想(IDM 2.0)は大胆だった。TSMCとサムスンに挑み、世界のチップ設計企業向けにフルサービス製造を提供するというものだ。インフラを自社で保有し、マージンを確保し、西側の半導体主権を担保するという論理は正しいが、実行が上手く伴わなかった。設備投資コストは急騰し、投資回収は遠く、長年の過大約束と未達成により主要顧客の信頼はなお回復途上にある。
ウォール街はこの取り組みを大幅に割り引いて評価しており、それが株価に反映されている。しかし、それは誤算かもしれない。
市場の誤算となった、地政学的な価値という追い風
地政学的緊張が高まる今日、半導体は国家安全保障資産とみなされる。米国内に拠点を置くインテルのファウンドリーは、単なる価値ある事業ではなく戦略的資産である。各国政府は主権的サプライチェーンを求め、主要チップ設計企業はアジア依存を減らす国内製造先を欲している。インテルはこの潮流の中心に位置する独自の資産を抱えている。
インテルはいまやふたつの物語を併せ持つ。
・レガシーチップ事業:AMDとエヌビディアに後れを取り、実行の一貫性を欠き、先見性よりも後追い姿勢が目立つ。
・ファウンドリー事業:資本集約的で誤解されがちだが、世界的な半導体主権論議の核心に位置している。
分社化という選択肢と真の問題
米国とEUが国内半導体生産に巨額資金を投じる中、ファウンドリー部門は意図せずして地政学的資産となった。防衛産業、政府系ファンド、さらには米国での信頼を求めるアジア企業までもが注目している。インテルの規模と設備投資要件がプライベートエクイティ(未公開株式投資)を躊躇させる可能性はあるが、コンソーシアム(企業連合)や戦略的カーブアウト(事業分離)は依然として実行可能な選択肢だ。
問題は、ファウンドリーの価値がインテルの複雑な組織構造、遅い意思決定、利益相反によって封じ込められている点である。事業を切り離せば、顧客開拓と戦略立案を自由に行い、正当な評価を得られるはずだ。経営陣がこの価値を解放しなければ、必ず外部の誰かが動く。今日の市場は過小評価された戦略資産を素早く見抜くだろう。



